タワーに棲む者達/夢日記

■071220.thr

彼らを起こさないように。

物音をたてないように。

そっと、そっと、静かに足を運ぶ。

空がようやく白み始める頃。

まだ、漆黒の闇がようやく薄青い闇に変わったばかりの時間帯。

俺は起きだして朝食の準備を始める。

5人分の食事を作るのは大変だ。

しかし調理以上に難しいのは彼らを目覚めさせずにキッチンに立つことだ。

物音を立てて彼らを起こしてしまえば、それはもう失敗。

だが、室内に散乱した物品がそれを阻もうとする。俺は彼らみたいに夜目が利かないというのに、彼らは決して俺に部屋を片付けさせてくれない。だから俺は昼間のうちに一生懸命に部屋の中の物品の配置を暗記し、この朝の試練に挑む。

頭の中にある部屋の中の光景を頼りに進む。ドレスは箱から引っ張り出して立て掛けられたテーブルの足に引っ掛けられている。テーブルクロスは安楽椅子の上にテントを作っており、その上に埃が降り積もっている。おもちゃの箱が転がり、部屋の真ん中に使ってなどいない赤ちゃん用ベッドがある。左手には使ったことの無い掃除機があるので危険だ。右からグランドピアノとベッドの隙間をすりぬけて……

「…未熟者め…」

不機嫌そうな顔の末娘が上から突然ぶら下がってきた。

「全くだ、音を立てまいと気を張り詰めて歩いて来るのが却ってこっちの警戒心を刺激する」

こちらは二男だ。いつのまにか俺の背後に立っている(そしてどうやらナイフを抜いている)。

「まあそう言うな。彼だって努力はしているのだ」

そう言ってくださったのは雇い主である所のお父上であらせられます。が、ご主人様もお目覚めですか…。

ああ、今朝も失敗である。

長女と奥方は起きてこない。昨夜のお仕事でお疲れだったのだろうか?いちいち俺をいじりに来ることは無かった。

俺の仕事は毎日三食を用意し、食料と武器の買出しに行き、血に汚れたドレスやスーツを専門のクリーニング店に持って行くことである。

執事という名の奴隷はつらい。

□ □ □ 

21日の夢日記を書いていたら思い出した。