幻想・暴走・妄想、三本/夢日記

DATE::080102.wed

葦原に覆われた湿原を小船が行く。

本流から離れ細い水路を半刻ほど行かねば辿り着けない隠れ里。

分厚い雲に覆われた薄暗いこの世界で、か弱くも確かな希望の火を抱える地。

私は師匠に呼び戻されてここへ還って来た。

「着いたよ」

水先案内の少年は初めて見る顔だった。私が里を旅立って後に生まれたのだろう。長い月日が経ったものだ。だが、こんな少年を水先に立たせるとは里もよほど苦しいようだと心痛も同時に覚えた。

里の再奥に師の住まいは変わらずあった。他の家々が高床式なのに対し、円錐形に萱葺いた竪穴式住居である。すだれをくぐり中に入ると師は少女と共に待っていた。

「よう来た」

礼を交わす。そして師の話が始まった。

師の語る所によると脇に控えた少女は新しい星の子なのだと言う。そして師は私に此処に留まり彼女を守るようにと命じた。そして師が旅に出ると言う。

私は抗弁した。少女を師が守り、私が旅を続けることこそ道理であろうと。

しかし、師は譲らない。師の頑なさを覆すことはできず、私は結論を保留して辞して一晩考える時間をもらった。

夜、星を数える。またいくらか輝きは減ってしまったようだ。この里の空すら闇に覆われつつあるのか。一体この闇の発生源は何なのだろう?一刻も早く見つけ出さなければならない。それが私の旅の目的だったはずだ。なのに何故居留守を任される羽目になったのか……。私は嘆息する。

「ここにお出ででしたか」

小声ながら背後から声を掛けられて私は身を竦めた。そろりと振り返ると件の少女が後ろに立っていた。

「ちょうど良かったです。このまま里を出ましょう」

言いながら彼女は私の荷物を持ち上げて見せた。意外に行動力があるようだ。

「私は、私が旅に出る時を待っていたんですよ?それをお師匠ったら自分が旅に出るって何をお考えなのかしら!?確かに私は里の外に出たことは無いけれど、もう道は知っているのに」

そう言って彼女は空を見上げた。すると私の目にも確かに星空を霞ませる闇の流れの本流がわずかに見えた。私は驚いて少女を見ると、少女はそれを見透かしていたかのように自信ありげな笑みを返して見せた。

私は確信した。この子は本物だ、と。

導師に迷いは禁物である。さっきまでの私は迷っていたが、今の私に迷いは無かった。師は絶対に恐ろしい剣幕で怒るであろうが、それはすべてが終わってから聞く事にしよう。

***1st epi' end

***2nd epi' start

アナウンサーは語気を強めて疑問を投げかける。

「果たしてこの猟奇的殺人の動機とは一体なんなのでしょうか!?」

彼はそれほど気の強い人間ではない。今だって、所在無げに頭を掻いている。そして言う。

「別にこれといった理由があったわけじゃないよ。ただ、なんていうか、確かめたかったんだ。僕の行為に対してどんな反応が得られるのかを」

僕は彼が殺人を犯したことを知っている。僕だけが知っている。

沈む夕日が団地の擁壁の向こうへと落ちて行き、公園は薄暗さを増した。

「懐かしいな。二人で夕日が落ちるまで遊んだあの頃が」

彼は言いながら擁壁に夕日が遮られていない場所まで行き、西の空を見た。彼の瞳が燃えるように煌めく落日に反射して輝いた。それは、弾け落ちる直前の線香花火に似て儚く、やがて光を失って闇が訪れた。

母が彼を車で送って行くようにと言った。

僕は難色を示した。彼はもうこちら側の人間ではない。この闇夜の街に放っておけば、きっと自然に滅びていくだろう。そして、それが似合いだ。

だが、母は僕が送らないのならば自分が送ると言った。

それは―

*** 2nd epi' end...3rd epi' start

「君が原作のよしひら君だね。君の脚本のおかげでいい作品が作れたよ、ありがとう。今日はよろしく」

49歳と言うその壮年の男はにこやかに手を差し伸べてきた。

「いえ、あなたに監督していただけてとても光栄です」

俺は差し出された手を取り、しっかりと握手をしつつ頭を下げた。

そういや以前、ゴジラの脚本を書いていたな(夢の中で)。それをいまさらながらに思い出す。

その隣のマネージャだという女性とも握手をして、今日の段取りに入る。

「今日はよしひらさんにナレーションの部分を担当していただきます。担当部分に付箋を貼って傍線を引いた台本をお渡ししますから、今のうちにご確認下さい。ナレーションをやっていただくのは本日の試写会だけです。よしひらさんには放送室に入っていただきます」

云々。

上映版ではちゃんと本職の人がやっているナレーターのアテレコをリアルタイムでやろうというのだ。むむむ、それはめんどくさいけど面白そうだ。

さて、俺は放送室に入り、出番を待つ。

するとそこへ音響スタッフとして懐かしい友人が入ってきたのでつい話し込んでしまった。

そして、一時間後なにやら眉根をひそめたマネージャさんが部屋に入ってきた。

「……出番をお忘れですね……!」

……?いや、だって出番はまだのはずだけど……

「台本のタイムテーブルはそうですが、試写会用の時間も書いておいたはずです!」

あ、ほんとだ。ってことは……?

「……サプライズ企画は大失敗だよ」

監督もにこやかに怒ってらっしゃいますね……。

「す、すいませんでした!」

と思いっきり頭を下げつつ心の中では、

(いや、良く考えたら企画そのものに無茶が過ぎるんじゃないか?これは?)

とか思った。

放送室を出ると古い友人がフォローを入れてくれた。

「いや、しかし変な鼻声とかを披露せずに済んで良かったじゃないか」

「……確かに。だが、俺は実はちょっと頑張れば鼻から抜けるようになるのだ!」

俺は声色を変えて喋ってみた。

そしてその後、監督たち関係者と食事会となったが先ほどの空気とは一変して和やかな会となり、俺はつい長居してしまったのだった。

***///

なげぇ……。

めんどくさかった。

憶えているのはいいんだけど、長いと大変だな……。

でも、勿体無いし……。

夢日記は長さを自分の思い通りにできないのが悩み。

ゴジラの件は、確かに前に夢の中で締め切りに追われたことがある。

……中身はちょっと憶えている。

自衛隊側が中心だったと思う。