宮部みゆき『火車』新潮文庫/小説感想

クレジット破産の事実を突きつけられ、動転して失踪した女性を探すように婚約者から依頼された休職中の刑事。

しかし、この事件は意外な展開を見せていく。

宮部作品では一番の出来と感じました。

時代物の雰囲気とこの『火車』以降の『理由』『模倣犯』の殺伐としたドキュメンタリーとがほどよい割合で交じり合っている。宮部さんらしい作品だったと思う。

分量としても文庫本一冊ですっきり終わっているし、テンポもいいし、読み応えもある。

『理由』や『模倣犯』はリズムが悪かったり、長すぎたりで宮部作品未読者には薦めにくいけど、これは薦めやすい。

最後がちょっと男としては煮え切らないと感じるが、実際のところ女をひっぱたけるのは女なんだよな。

男はすぐ殴りたいとか思うけど実行する時にはどうしても男女を意識しちゃうからダメだ。

この最後まで書かないところも宮部作品らしい気もする。