氷雨/散文

ぎゅうっ、と音を立てて全身から心臓へと血が退いていく。

血を失って、手足は冷たくなる。

感覚は停止し、指は痺れて動かない。

胸が押しつぶされるようで、息苦しい。

呼吸が難しいので、息を吐くためには体を折り曲げることで肺をつぶさねばならず、息を吸うためには背筋を伸ばすことで肺を拡げなければならない。

息を吸ったときに空が見えた。

暗く、冷たい雲が垂れ込めている。

ああ、こりゃ降ってくるな。

過たず降ってきた。

氷の刃。

空から無数の刃が降ってくる。

冷たくて、鋭い氷の刃。

重力によって加速して、風に吹かれて僕めがけて降ってくる。

右手首、右腕、右肩、額、右眼、左眼、喉、鳩尾、左胸、左肩、左肘、左手、腹、右股関節、左太腿上部、右膝上、右ふくらはぎ、左アキレス腱、右足甲、左足甲、計20箇所。

刺さる、突き刺す、貫く。

傷口から血が滲む。

氷は融ける。

融けた水と血が混ざり合って流れる。

体から熱と血が失われていく。

痛覚は冷気に鈍って、却って心地よい。

氷が融けきった時、穴の開いた肉と皮と骨の塊が、赤茶けた水溜りの中に横たわっているだろう。

駄作。

2点。