ほつれゆくイト

人はその制服の通りの人間になる。

[ナポレオン、Napoléon Bonaparte(一世)(1769-1821)]

12年前にご近所さんから貰ったばかりの頃、そのシャツはきれいな青色だった。

当時の俺には丈が高すぎて、膝上まであったが俺は好んで着続けた。

空に似た色の150~160cm用のそのシャツを着る事には、120cm程度だった俺には一種の願望が籠められていた。

背が伸びて段々丈も合うようになったのは高校に入ってからだった。

それが8年前。

私服を着ることは少なかったが、一番斬る事が多かったのはこのシャツだったように思う。

大学に入った頃にはそれは殆ど色褪せてしまい、“白いシャツ”になっていた。

そして繊維が擦り切れて、所々布地が薄くなっている部分が目に付くようになってきた。

そして今。

袖口や裾、襟刳り等は繊維が擦り切れて布地が破れている。

特に右裾は糸が少しずつほつれていって、大分短くなってきている。

色褪せ、擦り切れ、ほつれていく。

今の心に適ったこの服は今でもお気に入りだ。

少しずつ色褪せ、擦り切れ、解れて、対称性を失っていく。

服に映る心、心が現れた服。