西武とホークスの違い/Hawks

非常に興味深い記事が出ていたので取り上げる。

「“西武を変えた男”デーブ大久保コーチ、快進撃の秘密を激白!」(080513 SANSPO.COM)

ラジオ中継などで複数の解説者のコメントの端々に「デーブ大久保がデータ野球で西武打線を変えた」という情報が見え隠れしていたのだが、この記事でその姿が顕になった格好だ。

特に注目したコメントはこの部分。

 ――具体的にいうと

 「ファウルの数も1つの例。今月1日時点で(スコアラー陣の調査によるファウルの数が)リーグトップ10でうちの打線から5人出ている。それだけ粘れれば、相手投手の疲労も早まるし、それだけチャンスが多くなるということ」

このコメントに先立ち、打撃に関しては振り切ることを重視していると語りながら、一方でファウル数という普通はあまり注目されないデータに注目し、それにちゃんと理由付けできている。自チームのデータについてこれほど細かい点に注目している。ましてや他チームの情報をや、である。

個人的にはこの考え方は昔から書いてきたことなので他チームのコーチということで複雑な心境だが我が意を得たりという思いだ。

このようにファウル数に注目をしつつも、「右打ちを指導するとヘッドが下がる」ということに配慮を欠かさず、実際試合前の指示は(作戦に関わる情報のため詳しい内容は明かされないが)極めてシンプルで解りやすいという選手のコメントがいくつか得られている。

選手への指導内容や体調管理について記録した「カルテ」を導入したというのも驚いた。フットボールではACミランがもっと進んだ体調管理をやっていることが知られているが、野球界ではそういうことをやっている球団は他に無いのではないだろうか。とても優れた取り組みだと思う。

これならコーチごとや数カ月おきなどに矛盾した指導が行われることによる選手の混乱を避けることができるだろう。

解説者としてのデーブ大久保は妙にへつらっているような印象で好きになれなかったものの、今になって思い返せば言葉の端々にデータ重視の兆候はあった。

正直、こんなにコーチ業がはまるとは思わなかったので、この資質を見抜いた渡辺監督に脱帽しつつ自分の見る目の無さを羞じることしきりだ。

ちなみにホークスでは、王監督より「内角の直球を引っ張って振り切ってのホームラン」が理想像とされており、「内角球を呼び込むために外角球はカットしてファウル」なんてやっても「外角を流そうとして失敗している」としか捉えられない様子である。逆に引っ張ってのファウルは評価されるが、それは「バットを早く振りすぎている=球をぎりぎりまで見ていない」ということであり、三振が増えるばかりである。総じて「常に内角球を意識している」状態なので、一般によく言われる「強打者は内角を意識させておいて外角で討ち取る」という投手側の常識は内角球を投げずとも外角球一辺倒でも十分に達成できるという理屈もある。

この不利に早く気づいていただけないものだろうか?

投手も打者も大きく育って主役は多いのだが、脇役が育っていないから脆さを抱えることになる。

今の西武は4番のブラゼルも反対方向への打撃が持ち味だし、全員が全員助演男優の手堅さがあり、かつもともとの素材が良いからこそ定期的に本塁打を放つことができる。

戦略・戦術は兵の能力を最大限に生かすためにある。

その有無が今の西武との違いだろうな。