自転車観光/夢日記

DATE=080417.thr

自転車に二人乗りして田舎道を走っている。

舗装されていない路面で車輪が跳ねて、後ろに乗っている女の子が僕を掴む手に力が篭る。

「スピード落とそうか?」僕が尋ねるけれど、

「もうちょっとで終わりでしょ?」と彼女が言う。

彼女の言うとおり舗装されていない道はあと数メートルで終わり、アスファルトの道が見えている。

「ねえ、あれがその水路?」彼女が言う。

アスファルトの道の脇に石造りの水路が走っているのも見えていた。

この一帯は火山灰台地であり、利水のために石造りの水路がよく発達していて、現在ではそれが観光名所になっているのだ。

僕個人としてはここを訪れるのは(架空の土地なので夢の中での話なのだが)二度目。彼女は初めてだ(というのも、彼女は架空の存在なのだからそれも当然なのだが)。

ミズゴケの深い緑色と水にぬれた黒い石に白く輝く流水の複雑な水面表情が映えてそれ自体が清涼感を感じさせる。僕らはそれに非常に満足した。

「次はどこに行こうか?」地図を広げながら僕は言う。

「この友成橋は橋に時計台があって、時計台が3時を打つ時に機械仕掛けで水門が連動して上げられるんだ。大きな水門だからけっこう壮大でおもしろいよ」

「この……なんだか読めないのは?」

「これは……僕も行ったことはないんだけれど、ちょっと変わった神社だ。年間のほとんど毎朝霧が出る湖があって、そのほとりにムカデの神様とそのムカデの神様にむかし生贄に捧げられた女性とが祭られているらしい。恐山みたいなところらしいよ」

昔見たテレビ番組の映像(もちろん、架空)を思い出しながら僕は彼女に説明した。

尼削ぎで色白の少女。恐らくは病弱な、良家の子であろう、晴れ着を着せられて白く霧に包まれた湖に船に乗せられて――。

その記憶の中の湖の霧が心から染み出したかのように、僕は一瞬ひやっとする空気を感じて震えた。

「そ…っか、じゃあ、そこはやめにしよう」

彼女は僕の様子を見ていやな感じを察したようだった。

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逆に不思議になるくらい実在する女の子は夢に登場しないんだよなぁ。

まあ、シミ一つ無いってのがまず非現実的だし、せっかく非現実なのだから現実を持ち込む必要は無いということか。

空想が便利すぎて現実に適応できない人間の好例である。