I・アシモフ「ファウンデーションシリーズ」①~⑤ハヤカワSF文庫/小説感想

ファウンデーションシリーズ(或いは銀河帝国興亡史)」の第五巻…と呼ぶのはもはや正しく無いきがしますね……。

とにかく『ファウンデーションと地球』を読了しました。

ファウンデーションシリーズ」の残る2巻は、時間を遡ってファウンデーションが設立されるまでを描いた「ファウンデーション前史」になるようなので、ここまでの感想をいったんまとめたいと思います。

まずはあらすじを。

1万2千年続いた銀河帝国の衰退の危機を察知したハリ・セルダンは、彼が構築した巨大な人間集団の挙動を取り扱う心理歴史学を用いて、銀河帝国滅亡後の混乱期を短縮する方策を実施します。

そのための機関はその真の目的を帝国に悟らせず、帝国自身に創設させるために「銀河大百科辞典第一財団」として設立されます。

以後、その第一財団は自身では苦闘しながらも結果的にはセルダンが計画した通り―セルダン・プランの通りに―第二銀河帝国の建設へと進んで行きます。

ここまでが『ファウンデーション』および『ファウンデーション対帝国』第一部までの筋であり、物語の面白さは大きな時間の流れを飛び越えつつこれらの政治的、軍事的、経済的闘争の流れを俯瞰することにあります。

ところが物語は『ファウンデーション対帝国』の第二部「ザ・ミュール」より少しずつ色合いを変えていき、そして第三巻『第二ファウンデーション』では決定的に変わってしまうのです。

ここでは、ミュールとの対決や第二ファウンデーションの探索と対決が描かれ、それまでの歴史モノの面白さとは異なってミステリ的面白さが前面に出てきます。

そして、この第三巻までで20代のアシモフはいったん「ファウンデーションシリーズ」を終了させています。

第四巻『ファウンデーションの彼方へ』および『ファウンデーションと地球』は40年後に執筆されたものであり、第二ファウンデーションの再探索を擬装として第三の存在の探索が描かれます。

そしてこれらは完全にそれまでの「ファウンデーションシリーズ」と時間軸を共有しただけの、全くの別物という印象です。

評価が低いとのWikipediaの記述は「ファウンデーションシリーズ」としての評価のものでしょう。

まったく別物、というより解説から想像するに、アシモフのロボットものの延長線上にあるものとして読めば面白いのだと思います。現に、僕も楽しめましたし。

ミュールの登場が無ければ歴史モノとして続くことができたのでしょうが、ミュールが作者のコントロールを超えた怪物であったためにそれに勝利する第二ファウンデーションも怪物的になってしまい、結果として当初の「1000年間で第二帝国を建国する過程を描く」という当初の作品の青写真は果たされないことになってしまいました。

それがアシモフをして第三巻でいったん筆をおくことにさせた本当の理由ではないかと推測します。

そして、その怪物をいかにして処理するか、答えになりそうなものを見出したからこそアシモフは続く四巻、五巻を執筆することを承諾したのだと思いますが、それでも書きながらアシモフは迷います。迷いが物語から読み取れるからこそ読者も戸惑わざるを得ません。

それでも、テレパシストとロボットと人間とが抱える共存の問題について、非常に興味深い物語が展開されていると思います。また、人間が目指す方向性をいくつか示したり、文化や言語の広がりについてのアシモフの考え方もとても興味深く読ませてもらいました。

つまり、一巻と半分までは歴史モノとして、それ以降は古典SFとして面白いと思います。