新しい著作権ビジネスについての推測/思索

将来実現するであろう著作物からの収益システムについて、クリエイティブコモンズの先の展開を夢想する。

それを仮にデジタルプロダクツ・プレゼンター・サービスと呼ぼうか。

そこではすべての著作物は無料で公開される。

著作物公開ページには、デジタルデータに変換された著作物―デジタルプロダクツが、テキスト、画像はそのままの品質、音声、動画はやや品質を落として公開される。

周囲には、スポンサーへのリンクバナー、その著作物の物質的表現物―フィジカル・プロダクツ販売代理店へのリンクバナーが配置されている。

フィジカル・プロダクツとはつまり、物理的実体を有する所有形式という意味でデジタル・プロダクツに対応したネーミングであり、現在在るような、テキストなら挿し絵や装丁を含む総合芸術としての書物、画像なら画集、デジタルより高音質な音楽ディスク、デジタルより高画質な動画ディスクがそれに当たる。

著作者は著作物公開ページへのアクセス数、被リンク数でランク付けされ、ランクに応じてデジタルプロダクツ・プレゼンター・サービスから報酬を得る。

勿論、ページ内リンクにあるようにフィジカル・プロダクツの販売益からもその物理的な製作・販売過程を委託した会社から収益を得る。つまりデジタルとフィジカルの新旧の収益形態を有する。

アクセス数に加えて被リンク数をランキング要素としているのは、パロディ及びレビューによる引用、あるいはオマージュによる連携を視野に入れているためである。

ここにおいて著作物は無料で公開され、ダウンロード及び改変は自由となる。レビューやファンとしてのプロモーションに著作物からの引用を用いたり、パロディやMADなどの二次創作物を作成し私的なサイトで公開したりする行為は、当該作品のデジタルプロダクツ・プレゼンター・サービス内ページへとリンクを張っている限り許される。

これはそれらが作品の良き広報となることを期待しての制度である。

これらの二次創作物は、他のデジタルプロダクツ・プレゼンター・サービスに籍を置くだろう。つまり、本家がメジャーリーグに居るのならば、真似っ子はマイナーリーグに居るようなものだ。

このように、大小のサービス会社が互いにコンセプトを提示して競い合いながら存在するだろう。

また、一次著作物についてもその創作において他著作物からの影響があったことを「オマージュリンク」として公開ページにリスト化することで、影響を受けた著作者への恩返しを可能とすると共に、パクリ批判への予防線とすることができるだろう。また、著作物相互の関連性が明らかになることは、読者にとって同種の作品をまとめて楽しむ上で探す手間が省けて有益であり、かつ、読者に評価を委ねる上で必要な素地となる意味で著作者側の創作へのプライドを刺激するだろう。

つまり、オマージュ=双方に質の高い類似著作物、パクリ=後発が劣っている類似著作物、リメイク=後発が優れている類似著作物、のいずれであるかを読者に委ねることで活発な競作状態を誘い、創作文化の活性化に繋げる。

また、初出の時間がプレゼンターによって把握されているので、作品相互の前後関係も明確になるだろうし、アクセス数によって作品知名度の推測もより正確になるだろう。これらの条件が著作権関係の訴訟を簡略化するだろう。

デジタルコンテンツという括りであらゆる創作の収益形態は均質化し、メディアミックス戦略は消失してメディアミックスが自然発生する。

原作小説と音源にリンクを張り、動画化して公開する。

相互リンクにおける適正な利益分配関係については市場原理が決定するので推測することは無意味だ。

著作物の物質的所有の形態は高級なものとなり、データーベースによるコンテンツ提供が一般的となる。

初期には挑戦的試みとして採算が度外視されるだろう。信頼関係を醸成することが一番難しいかもしれない。

このような業界が成立する環境条件は、テレビとパソコンとゲーム機の更なる融合が進められ、著作物に触れるインターフェースは融合すること、そしてそれによってネットワーク環境をほとんどの人が享受していることが一般的となっている必要がある。

この膨張する未来は著作者一人ひとりの収益を薄めることとなるかもしれない、しかし現状から辿り着く最も可能性の高い未来―萎縮する未来よりは余程文化的価値が高いと思う。

※1

サービスの名にプロバイダではなくプレゼンターとしているのは、一つは、無料のサービスとなり視聴者に作品を“プレゼントする”業態であること、そして単に供給するだけでなくコンセプトを持ったサービスを“プレゼンテーション”する必要があることを意識している。アニメ特化、マンガ特化、男性向け、女性向け、ティーンズ向け、二次創作特化…etc…ある程度のコンセプトが無ければ視聴者が迷ってしまうのだから、切り口を明確にしてそれぞれのコンセプトに合ったプロデュースが優勝劣敗を決定付けることになるだろう。

※2

もちろんこれらの著作権サービスは2次元以下の著作物を主たる対象としており、3次元の著作物、彫刻や人形についてはこの限りではないだろう。しかし、販促として同系列で広告が扱われることがあるだろうし、三次元鑑賞の場としての美術館は健在であろうと思う。