脳内会話/daily

 僕は慌ててベッドから跳ね起きた。タンスの上に積み上がった洋服の山からトレーナーとズボンを適当に引き抜く。トレーナーを頭からかぶるのは一瞬。続いてズボンに足を通す。ズボンを上げる、チャックを閉める、ベルトを通す。これらの一連の手順を手探りで行いながら目線は室内に巡らしていた。勉強道具や財布などの外出時の必需品が鞄に入っていることをテーブル周りがキレイに片付いていることで確認する。最後にジャケットに袖を通し、左手でベッドの上の携帯電話を拾い、右手に鞄をつかんで、ドアへと早足に歩み寄る。歩きながら左手で髪を触り、寝癖がないことを確認する。たぶん、大丈夫。靴をつっかけ、リズム良く爪先で地面を叩くようにしてかかとを靴の中に滑り込ませる。そして、何となく部屋を振り返った。

 ここまでで既に違和感を抱いていたのだろうと、今なら思える。

「ここ全部修正な」

「はあ?前は良いってことになったじゃん!?」

「それは万全の時じゃなかったろうが。全然情景が見えて無いよコレ。冬でしょ。パジャマとかジャージ着て寝てるんじゃないの?」

「ああ!」

「それから、やっぱこれだけ動いて気付かないってのは無いよね…。もう起きた時に気が付く、でいいんじゃないか?」

「でもそれだと廊下でのシーンが…」

「それはあまり重要じゃないんじゃないか?まあ、公平性は欠くことになるかも知れんが、フェア・アンフェアを気にするほどのことはハナッから無かろう。それに、ここを外出を躊躇うエピソードにしたほうが展開的にやりやすくないか?」

「…それは…確かに…」

「目覚める時間をもっと早めにしてだな…」

「…結構、このテンポ気に入ってたんだけど…」

「テンポだけじゃん。だからダメなんだよ。見て書いた部分はテンポも良くて、意味もある」

「あ~ぁ…」

「とりあえず4日までは論文考えなくていいんだから、今のうちに出来るだけ書こう」

「お~ぅ…」

「冬が終わるまでには仕上げたいな…出来なければ死ねと言いたい所だが、そうもいかん。気合入れていくぞ」

以上、脳内会話。

今なら…今なら幽白のカバー折り返しで冨樫がコメントしてた内容がよく解るぜ…(当時も何となく共感したけど)