勝敗の喜怒哀楽/World Cup Football
とうとうベスト4が揃った。
準決勝は、
ドイツ対イタリア
ポルトガル対フランス
である。
ドイツは開幕前は日本にまで敗戦するなど、不安定な守備が懸念されて悲観的な見方が強かった。
にも拘らず、開幕してからは爆発的な攻撃力でペースを掴み、日程や組み合わせにも恵まれてあれよあれよとベスト4である。
イタリアも開幕前はセリエAの不祥事で選手団の動揺が心配された。
実際、開幕してからは勝ったり負けたりでパフォーマンスはばらつきが目立ったものの、伝統の守備力からチームを落ち着けて調子を整え、オーストラリア、ウクライナと格下を確実に退けてここまで勝ち進んだ。
フランスも本国では期待されていなかった。
ただ、ジダンの引退が美しいものとなるようにとサッカーファンが祈るくらいで、ここまでの勝ち上がりはあまり予想する向きは無かったように思う。
しかし、ジダンとビエイラの誕生日に行われたトーゴとの試合で、流れは大きく変わった。ジダンに代わってキャプテンマークを着けたビエイラが、累積警告で欠場したジダンの引退を先延ばしにするゴールを決める。スペインにも逆転勝ちを納め、ブラジル戦では初めてジダンのアシストでアンリが得点し、「ジダンとアンリの相性は悪い」という風評を振り払う。
再びジダンの下に一つになったフランスは侮れない。
ポルトガルだけは、ある程度期待されていたと言える。
しかし、他の大国ほど期待されていたかというとそうでもなかったろう。
中盤を二人欠いた状態でイングランドに勝利するというのは少々意外だった。
このまま初優勝まで走ってしまうのもまた一興か。
一方、準々決勝で敗退したのは、期待の大きかったチームばかりだった。
イングランドは66年大会を超える最強チームと呼ばれ、ベッカムの気迫も並々ならぬものがあったし、選手もそれを自負して今大会に臨んだだろう。
しかし、オーウェンの負傷から、歯車の狂いがはっきりとしたように思う。
ジェラード、ランパードのコンビのミドルシュートがなかなか決まらない。ルーニーも復帰したばかり。戦術は段々守備的になり、準々決勝では結局1点も取れずにPK戦で敗退。
ダメージが大きい去り際だったろう。
アルゼンチンへの期待も大きかった。
特に豪華な攻撃陣を羨んだものだ。
しかし、ドイツ戦ではおよそ南米らしからぬ守備固めの選手交替に走り、敗退してしまった。
公認のマラドーナ2世、リオネル・メッシへをもっと見たかったが…。
もっと見たかったと言えばブラジル。
チームとしてよりも個々の圧倒的な力量でグループリーグを突破し、僕は呆れて乾いた笑いを発することしか出来なかった。
しかし、決勝トーナメントは甘くなかった。
どうにも結局は調子が上がりきらないままに敗退した、という印象が強い。ロナウジーニョも本来のキレからは程遠かった。
返す返すも残念である。
ウクライナだけは、少し残念に思いながらも、満足しながら帰途に着くだろう。
ロシアの覇権下からの自立の途上にあって、世界大会でのベスト8は胸を張っていい結果だ。
少し改革政党が内輪で揉めていてごたごたしている国民感情に明るいニュースだったろうと思う。
準決勝を含めてあとたった3試合。
来週の日曜深夜には全てが終わる。
どんなドラマが見られるだろうか?
まだまだ楽しみである。
ところで、決勝トーナメントを見ていてつくづく感じるのは、日本の入る余地なんてどこにもない、という今更ながらの世界との実力の差である。
日本の倍のスピードでのプレーを90分間維持するフィジカル。
ボールを自分の為にコントロールする技術力。
ゴールやボールに対する執念。前に向かう意志。
どれを取っても日本はこの決勝トーナメントのレベルには届いていなかった事を、サッカー素人の僕は今大会でようやく思い知った。
或いは、日本の多くの“日本代表ファン”がそれを感じているのではなかろうか?
日韓大会では、「日本って意外に強いじゃん」と思ってしまった。
しかし、ドイツ大会では「日本は本当は弱かった」と気付かされた。
コンディションの調整次第でこれほど結果が変わるものか。ホームのヨーロッパは強い。
そうやって、底辺からの意識改革という意味で、今回のワールドカップ熱は日本サッカーに意味があったのではないかと、僕は思っていたりする。