目覚めの過程/daily

夢日記を書くだけあって、入眠状態から覚醒するまでの過程の記憶も、僕の頭の中には残っている。

覚醒過程には幾つかのパターンがある。

1)夢を見ない深い入眠状態から、ゆっくりと覚醒する場合。

この場合は、真っ暗闇からゆっくりと浮かび上がるようだ。黒から白へのグラデーションを辿り、そろそろと真っ白になっていく。これは、潜水艦が浮上するのに似ている。

真っ白な光に包まれた直後、恐らく目が外界の光に慣れて、部屋の様子が目に入ってくる。この最後の瞬間は、トンネルから出る一瞬を想想像していただけるといいと思う。

この浮上は、意識の浮上を伴う。

真っ暗闇に包まれた最初期の覚醒段階では、自分が何で、どこにいるのかが分かっていない。それが、目覚める過程でクリアになっていく。

それは、おおよそ「身体感覚による自意識→起きるべき理由→自分の位置→その他の情報」であるように思う。二番目が起きるべき理由なのは、「今日は○○がある日だった!」という時だけである。むしろ、入眠する為に思考を閉じたのと逆の順を辿る、と言う方が正しいかもしれない。

2)深い入眠状態から、五感への外的刺激によって覚醒する場合。

この場合は、1)の過程があまりに急速に完了するため、まるで暗闇に居た所を、強烈な光に襲われるように感じる。

あまりに急速なために、記憶の再生が間に合わず、目覚めた瞬間は何が何だかわからない。それ以上に、覚醒の原因となった刺激を探すのが優先され、その刺激が認識された後に、ようやく自我が還って来る。

急速な覚醒はかなり負担が大きいように思う。

無理に目覚めた日には、脳髄の深い所に何か、自分の一部を落っことしてきたような、特に頭の中心あたりがややしらけて鈍るような感覚が残る。そういう日はどうも、間が抜けてしまうし疲れ易い。故に、僕は無理やり起こされるのを好まないし、無理に起きると必ず二度寝をして、調整するようにしている。

まあ、普通はそんなこと無いのだろうが、多分夢をよく見る代償として、その辺の回路が脆弱なのだろう。

3)夢を見ている状態、浅い入眠状態から目覚める場合

まず、最初の状態は夢を見ている状態である。

夢の中での視覚・聴覚・身体感覚が生きていて、夢の中を知覚しているし、時には夢の中の記憶を持っている(どうせ脳による即興の作り話だが)。これは、脳が全身の感覚に対して優位を保っているのだろうと思う。恐らく夢と現実では脳と身体の立場が逆なのだ。

しかし、次第に現実の方の五感と身体感覚が覚醒してきて、通常の感覚が利いて来る。視覚が外界の光を知覚して、夢の情景は白い光に塗りつぶされ、夢の中からの声よりも現実のアラーム音に焦点が合うようになってくる。

また、この段階で、現実の方の記憶も還って来て、夢の記憶と交じり合う。

恐らく、この現実と夢の中間状態が僕は他人より長いのだろうと推測する。

僕は、この中間状態で、夢を見続けるかどうかを自分の意志である程度選択が出来るが、他人からそんな話を聞いた事はあまり無い。

この時の思考は十分に打算的だ。

まず、かなり正確に時刻の認識がある。10時だと思えば、おおよそ前後お15分の誤差で当たっているし、そこからしばらく夢を見続けたとして、何分くらい経ったかの大まかな推定が出来る。

次に、夢を見ながらその日の予定を思い返すことが出来る。その日の予定と、色々と秤にかける思考を成立させることが出来るのである。

この意味ではむしろ、夢というよりも過剰な空想状態に在るとも言えるかもしれない。だが、空想と異なって、夢は夢であり、コントロールは殆ど不可能である。

そして、いつの間にかノンレム睡眠に落ちてしまうこともある。

その意味では、夢と呼んでも差し支えないと思うが…

…おかしいな。何かこの説明じゃ、俺は危ない人みたいだ。

う~む…ま、いっか。事実だし。

で、半覚醒状態で夢と現実の記憶はブレンドされるが、これが長いほど、つまり「あと五分…」状態が長いほど夢の記憶は現実の記憶と連続して保存されるため、むしろ整理し易い。

しかし、この半覚醒状態が短いと、夢を夢として認識しないまま現実に還って来る。この時、夢の記憶は夢のカテゴリに配置されず、行方不明になる。そして、ふとした時に、思い返して夢か現実か判別に困る時があるのだ。

だから、僕はゆっくりと起こして欲しいです。記憶を整理させるために。