吉本ばなな『TUGUMI つぐみ』(中公文庫)

突然ですが、初恋をおぼえていますか?/ 作者による文庫版あとがきから

憶えてないね。

何せ覚えることがなかったからね。

悲しい人だと言ってくれるな。

ちょっと事情が複雑だっただけよ。

「その人と自分がいっしょに歩くようになるだけで世界はうまくいくだろうと信じていた頃を。あの清らかなエネルギーを。」[同じく文庫版あとがきより]

うひゃあ、こりゃあ瑞々しいお言葉で。

そんな爽やかコーラな青春送ってたら人生違ったろうか、なんて思うこの頃ですよ。

どうせ、俺はね。

この「TUGUMI」の、つぐみというコは恋をします。

あんな性格のくせして、きらきらとまぶしいくらいに。

それで惜しげもなくエネルギーを放射して、そして・・・。

っていう話なんだけどね。

とにかくつぐみは言うこと為すこと魅力的だ。

読んで、大人しく彼女の後についていくといい。

そしてまりあと呆れるといい。

それが楽しいから。

そういう読み方が良いから、本文中から引用しなかった。

そして一番かちっとくるのをあとがきから持ってきた。

こんちくしょう、くやしいなあ、とは思うほどに実際僕にそんな経験は無くて、でも、つぐみにできたんなら俺にも今からできそうな気がするね、とか思ったりする。

憧れるようなお話だね。

とか何とか言ってると、本から抜け出してきたつぐみは僕に言う。

「ばかめ。」

とね。

こんちくしょうめ。