Charm of the three trumps
事実は小説よりも奇なり
[George Gordon Byronの言葉]
地下鉄の車内で3枚のトランプを見つけた。
ハートの7と、スペードの1と、スペードの5。
なぜこんな所にトランプが?
夏カゼ気味でぼんやりとした頭に奇妙な光景が絡まる。
プラスチックの安物、端のプリントがかすれるほど使い込まれている。
誰がこんな所にトランプを忘れるだろうか?
色々考えているうちに気がついた。
7月15日。
電車に乗ったときは7月14日23時55分。
それが気が付けばカードが示す7月15日になっていた。
偶然、にしては出来過ぎ。
御丁寧に月と日付のスーツも考えられているように見える。
どういう意図が有って持ち主はこれをここに置いて行ったのだろうか?
或いは。
使い込んだ古いカードには魔力が宿ると云う。
カードの不思議な力が偶然を偶然でなくしてしまったのかも知れない。
このカードを僕が拾う事は偶然では無く、何かを暗示している、のかも知れない。
有り得ない偶然か、人の意思に因る必然か、はたまたカードの魔力か。
3枚のカードは拾って帰る事にした。
小説よりも奇妙な世界に僕らは生きている。
これは、その稀なる証拠なのだから。