朝とは違う道、夜の道

いきはよいよい かえりはこわい [日本の童謡『とうりゃんせ』より]

帰り道、微かに夜霧が漂っていた。

ひんやりとしっとりと肌に水気が取り付いて、少し沈んだ心を潤した。

夜道に人声は無い。

ただ、無数の蛙が水田を賑わせていた。

孤独には慣れている。

だがそれが人として褒められたものでないことも知っている。

見上げると赤みを帯びた月が懸かっていた。

赤は血の色、怒りの色、それに濁った月が僕を見下ろしている。