酒と僕

酒が苦手だ。

誤解を避ける為に言うが、僕は酒に弱いわけではない。

では何故酒が苦手なのか。

酒を飲んでいる時は楽しい。

気分にも拠るが機嫌の良い時は、気持ちよく酔える。

しかし、それ以外が良くない。

機嫌の悪い時、というか虚無的な気分の時だ。

更に気持ちが刹那的になる。

それはいつも僕の本質と離れて行こうとするので、

そんな時はいつも心が痛む。

きりきりと引き絞るように、

深みへ深みへと僕の本質を引っ張る。

飲んだ後、一番良くない。

虚脱感が体を襲うからだ。

この世の実体を無くしたような、

この世の縁から切り離されて自由になったような、

体が僕の物でない、何か強力なものになったような、

そんな錯覚に心地よく侵されて、

少し上機嫌になる。

ただ遠くへ行きたくなったり、行ける気がしたり、

電車を止めたくなったり、素手でも出来る気がしたり、

この世から消えたくなったり、消えられる気がしたり、

そうなって、少し寂しくて震えるのだ。