東野圭吾『容疑者Xの献身』文集文庫
東野圭吾は本当に上手いな。
本当にすごい。感心する。
『予知夢』の感想は書かないけど、『予知夢』は科学的トリックに力を入れるがために論理トリックが弱い。だから、科学的トリックを解けるかどうかという所で作者と読者の勝敗が決まってしまう。エンターテイメントとしては面白いんだけど、そういうミステリ的な惜しさがある。
この『容疑者X』はその科学性ってのは抑えて、ミステリ的面白さが前面に出ている。
しかし、それはミステリファン向けというわけではなく、きっちり一般向けに面白いつくりになっている。
巧い。
それから、ミステリ以外の人間ドラマとしての部分がすばらしい。
理系の人間を描いていて、容疑者Xの行動ってのは理解しづらいところはある。
でも、それを巧く描ききっているからこそ、最後の最後で人間味が爆発するんだよな。
完全犯罪が崩れる瞬間が美しすぎる。
すばらしい。
トリックに関しては、最初の聞き込みの段階から読者は違和感を覚えるはずだ。
問題はその違和感の正体に気がつけるかどうか。
まさか、あの描写が生きるとはな。
アリバイトリックは簡単なんだけどな。
すごく質の高い作品。
映画のヒットも当然です。
すごいわ。やっぱ東野圭吾は。
ホントすごい。
ベタ褒め。