A・C・クラーク『3001年 終局への旅』(ハヤカワSF文庫)/小説感想

面白すぎる!

ここまでの「宇宙の旅シリーズ」(「オデッセイ・シリーズ」)を読んだ者ならあらすじなど不要だと思う。

この作品で用いられるアイディアは……と列挙したいほどやまほどあるのだが、他人の楽しみを奪うサディスティックな趣味は無いのでやめておこう。

しかしなにより、巻末に付属している「典拠と謝辞」がなんと面白いことか!

作品中のアイディアの源泉について作家自らが語るのを読ませてもらえるとは、めったにない僥倖であると思う。

そして、それらが懐かしいの何の!

およそ1995年前後の発見が多く紹介されているのだが、それが僕が15歳前後の科学をちょっとかじり始めた時期に重なり、どうにも涙腺を刺激させられた。

フラーレンが発見された直後だったし、小惑星に「アシモフ」「クラーク」と名づけられたと言うニュースも見た。

何故そのタイミングで彼らの小説に手を出さなかったのかなぁ!

そうしていたら『3001年終局への旅』の和訳を首を長くして待つと言う、また別の楽しみがあったろうに!

僕は10年は遅かった。しかし、クラークの作品の鮮度はその10年などものともしない出来であり、僕を楽しませてくれた。これはSFとしては本当に凄いことだと思うが……。

逆の見方をすればもしかしたら僕が進歩が無いだけなのかもしれない―つまり、僕はクラークの言う「インテリ」だってこと。

ほんの1ヶ月前に逝去されたと言う。ご冥福―という言葉が適当ならば―をお祈りします。