A・C・クラーク『2061年 宇宙の旅』(ハヤカワSF文庫)/小説感想

何よりも冒頭に感銘を受けた。

冒頭でクラーク氏は、ガリレオ探査衛星の計画がチャレンジャー号の爆発事故に影響されて大幅な遅延が生じた件について触れ、その観測結果を待たないことに決めたと宣言しているのである。

逆に言えば、それまでは観測結果を待つことにしていたということで、この科学への真摯な姿勢は見習いたいと思いました。

この冒頭からも察せられるように、「宇宙の旅シリーズ」はクラーク氏の深い科学技術・知識を背景に非常に緻密に構成されているように感じました。

物語としても高品質。

冷凍睡眠と無重力環境による若化効果により、100歳を超えてなお衰えを知らないフロイド博士は宇宙船ユニバース号でのハレー彗星観光ツアーに参加する。

観光ツアーの描写が科学好きにはまずとても楽しいのだが、そのツアー中にユニバース号の姉妹船ギャラクシー号が前作において着陸を禁ぜられた衛星エウロパに不時着したとの連絡が入る。エウロパは、木星を材料にモノリスが作り上げた恒星・ルシファーの下で十分な熱量を得て生物圏を形成していると見られており、その進化を見守るためにモノリスによって保護されていると考えられていた。ユニバース号は予定を変更してギャラクシー号クルーの救出のために出発するのだが――。

エウロパはどんな姿になっているのか?突如エウロパに現れたゼウス山の正体とは?

めっちゃ面白いです。オススメ。