リア鬼改造計画/小説→漫画

リア鬼を読んでいて「むしろ漫画にするべき」と思ったので、そのアイディアを書いてみる。

原作既読の方のみごらんください。

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改造案1:『リア充鬼ごっこ』

ヒキオタの王様がリア充を妬んで全国のリア充をミリオタに狩らせるお話。

リア充探知ゴーグル」を装備したオタ鬼どもからリア充の一人・佐藤翼は逃げ切れるのか?無論、逃げられないわけが無い。陸上部だからです←結論

リア充なだけに、逃げながらも旧友と再会したり、妹を助けたり、恋人ができたり、なんたらかんたらで最後は王様を倒して、王子が即位してオタ狩りが始まるというハッピーエンド(?)

…になるはずだったのだが、主人公のあまりのリア充ぶりに読者の共感を得られず人気が低迷。あえなく打ち切りが決定される。

「俺には生き別れの妹がいた気がしたが別にそんなことは無かったぜ!」

翼の勇気がこの乱れた国を救うと信じて…!

  - 完 -

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駄目でした。

次、第二案。

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改造案2:『世紀末救世主伝説 リアル鬼ごっこ

時は世紀末―

馬鹿王の命令により、国中を巻き込み鬼ごっこの名を借りた「佐藤狩り」が始まった!

逃げ惑う佐藤さんたち!罪も無い人々の自由が、生活が、命が奪われてゆく!ああ、この世に愛は失われてしまったのか!?

住む場所も失って追われる佐藤さんの一人、佐藤翼は大いなる運命に導かれ混乱の渦の中心へと引き込まれていく―。

果たして、翼の、いや、全国の佐藤さんの運命や如何に!?

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…という完全なバトル漫画はどうだろう?

リアル鬼ごっこってどうやらルール上は拳で逃げ切るのはありっぽいので。

そうすると、例えば親父が死ぬシーンはこうなります。

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(略)

リアル鬼ごっこの一日目はこうして終了し、翼は自宅に向かって足を向けた。街には徐々に日常の喧騒を取り戻りつつあったが、翼の脳裏には先ほどの鬼との対決がまるで今もまだ続いているかのようにひらめき続けていた。

「あの一瞬、確かに俺は死を覚悟した。だが次の瞬間には体が勝手に動いて、そして鬼を殴り飛ばしていた。俺は武道の経験など無いはずだ……。なのになぜ、あんな動きが咄嗟にできる?」

いくら考えても答えは出なかった。しかし、鈍い頭とは裏腹に、熱く沸き立つ体中の血が彼に恐ろしい疑念を抱かせていた。

「俺には……親父のような暴力の資質が眠っているとでも言うのか……」

彼は拳を握り締め、呪わしげに拳を見下ろした。そのとき、彼の背後で微かな物音がした。

「誰だ!?」

翼は物音の方向に一瞬で向き直り構えを取った。鬼ごっこの緊張感は未だ去ってはいなかったのだ。だが、振り返った彼の目に映ったのは最も意外なものだった。

「お……親父!?」今まさに呪わしく思っていた人物の登場に戸惑いつつも、翼が構えを解くことはなかった。それがこの十年来の親子の関係だったからだ。

「むう……翼か……ごふっ!」だが、父は血を吐き地面に崩れ落ちた。翼が初めて見る、弱々しい父の姿だった。

「親父っ!」翼は意外な光景にようやく異常を察知し、父の元に駆け寄った。父の衣服はぼろぼろで夥しい血が流れ出ていた。

「……ふっ、わしも衰えたものよな……あの程度の使い手に後れを取るとは……がはっ」

「親父っ!親父も鬼にやられたのか!?」

「うむ……だが、逃げるだけで精一杯だった……その点お前は無事に退けられたようだな。それでこそ、修練の甲斐があったと言うもの……」そう話す父の顔はどんどん柔らいでゆく。翼はその優しい顔にどこか懐かしさを覚えたが、その懐かしさが果たしてどれくらい古い記憶なのか自分でも分からなかった。

「何を言っているんだ!?あれは、あの虐待が修行だったとでも言うのか!?」自分の中に湧き上がる感傷を必死に否定するように翼は問いかける。

「ふふ。だが、わしがお前に教えてやれることもこれが最後のようだ。いよいよ我が家の真実を告げる時が来た」父はそこで一旦言葉を切り目を瞑った。それから、切り出し方を迷っているかのように重たげに口を開く。「愛についてのことだ」

翼にとって数年来の願いが今まさに叶えられようとしていた。しかし、翼は喜びよりも不安を感じていた。再び開いた父の瞳に湛えられた光に哀しみを見取ったのだ。翼は唾を飲み込む。

「もちろんだ。教えてくれるのか?愛と……母さんの居場所を」

「違うな。母さんは死んだのだ。思い出せ。お前は見ていたはずだ!あの男、わしの弟がお前の目の前で母を殺し、妹を連れ去った光景を!」そう言って父は翼の側頭部を指突で衝いた。その衝撃により翼の脳裏に激しいフラッシュバックが起きる。

血を流して倒れる母……泣き叫ぶ愛……立ちはだかる男の姿……そして、男が俺の頭に手を伸ばして……

「思い出したか?お前の記憶はヤツによって封じられていたのだ」

「……だが、何故そんなことを?どうして愛はおじさんに連れ去られなければならない!?」

翼は衝撃的な記憶の回帰にめまいを覚えながらもなおも父に訊ねた。

「それは愛に天賦の才があったからだ。我が家に伝わる一子相伝暗殺拳、佐藤神拳のな!」

「う、嘘だッ!!!」

「嘘ではない。すべて真実の物語だ。だが、それにしても皮肉なものよ。力が足りず継承権を弟に奪われたこのわしの、それも娘が継承者の眼鏡に叶うとはな……。だが、翼よ!暗殺拳の使い手に待つのは険しく悲しき道のみ!この悲しみの連鎖を断ち切れるのはもはやお前しかおらぬのだ……ぐふっ」

「親父っ!それで、愛は、愛は今どこに!?」

「うむ……ヤツと共に大阪に住んでいるはずだ……だが、翼よ、今のお前ではヤツには決して勝てん。この鬼ごっこの混乱に乗じて愛を連れ出すのだ……それだけが希望だ……分かったな?」

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…みたいな濃い感じで妹を救いに大阪に行くわけです。

そして、大阪で旧友と再会。ダブル佐藤がリアル鬼ごっこに新風を吹き込む。

さらに、ヒロインを登場させてはどうでしょうか?

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「翼、こっちや!」

「こっちって、まさか壁越えを?」

「やるしかないやろ!いくで!」

「応!」

二人は自分の身長の倍はある壁を無事に飛び越えた。そして壁の向こうの静かな庭へと降り立った。そこにはワイングラスを片手にそう優雅に言い放ったのは黒いドレスの女が優雅な佇まいで椅子に腰掛けていた。

「騒がしい奴らだな。ワインがまずくなるではないか」

月明かりに照らされた白い肌が髪とドレスの黒に怪しく映え、唇とワインの赤を引き立てている。

「お主ら、鬼ごっこの標的か?」

「ああ、だったら何だ?」翼は自分を含めて多くの命が危険に晒されている同じ時に、これほど優雅にグラスを傾けているこの女に怒りを感じぶっきらぼうに返答した。

「ならばさっさとここから逃げるべきだな。ほれ、そこに鬼が来ているぞ」

向けられた敵意を柳に風と受け流し、女はグラスを持つ手で向かいの木陰を指差した。

「何言ってんねん。猫一匹おらへんやないか。無駄におどかしおってに」洋は慌てて振り返ったことを照れ隠しにごまかそうとすごんで見せた。

「……やれやれ。お主ら、この程度の隠身にすら気付けずに本当にこの鬼ごっこを生き残るつもりか?仕様も無いのう。おい、そこな鬼。この愚か者どもに姿を見せてやれ」

女がそう命じた瞬間に、今までただの闇であった空間が揺らぎ長躯の男が姿を現した。

「ふふふ……よもや私の隠身に気付かれるとは。流石は王家の血を引くお方。だが、それでこそ我が餓えも満足されようと言うもの」現れた鬼はそう言った。

「……ほう、これは異な事を口にするものよ。それではまるでお主の標的がこやつらではなく私かのようではないか」女は目を細くして笑みを浮かべた。

「いかにも」無表情で鬼は答える。

「そうか。今回の佐藤狩り、王家の親藩たる大阪佐藤家も例外ではないと、そういうことか?」

「御意なれば、已む無きことにて……鬼が一人、白狼!推して参る!」

白狼と名乗った鬼の姿がにわかに縮み、そして爆発的に跳躍した。しかし、王家の血に連なるというその女は椅子の上で微動だにせずただ一言呟いた。

「巽、無礼者を捕らえよ」

次の瞬間、わずかな影が翼と洋の視界をよぎり、そして中空から長躯の鬼が初老の紳士に肩を極められた状態で落下して来た。地面に叩きつけられた鬼の肩から鈍い音が響く。押さえつけられた鬼は呻くようにしてようやく喋った。

「ぐっ……なんと言う屈辱。使用人ごときにこの俺が敗れようとは……しかし、他者の助けを借りるのはルールに反……」

「詰まらん負け惜しみだな。乾は我が父の代から影を勤めし忠臣。誇り高き佐藤の名に恥じぬ真の武人よ!」

「なんと!?」

「さあ、巽。この二重の無礼者に名誉の死を賜ってやるがよい」

「御意」老紳士は頭を下げ、鬼を引っ立てて行った。

「まったく、とんだ茶番だな」女は眉根を寄せて嘆息した。「あの馬鹿め、幼少の頃痛めつけた意趣返しのつもりもあるのだろうが……ちっ、これ以上は捨て置けんか。おい、お主ら、馬鹿退治に行くから我が手足となって働け。お前は犬、そっちは猿と呼ぶとしよう。私のことは“姫”と呼べ」

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てな感じで、女王様タイプのどSヒロインとかどうよ?

つーか、王家の佐藤が弟しかいないって言うのも変だと思ったので。

親藩を登場させて内乱を拡大してしまえ。

そんで翼は、巽さんに修行を受けたり、認められたり、巽さんが戦死する際に「お嬢様を頼みます」とか託されたりするわけです。

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「泣いているのか?」

「な!シャワー中だ!馬鹿者!」

「巽さんにお前のことを頼まれた」

「……お前では力不足だ」

「そうかもしれないけど、似てるだろ?」

「何が?」

「字とか」

「馬鹿者め。犬の分際が笑わせおって」

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そして、佐藤神拳の現継承者である叔父に命じられて暗殺拳の修行として鬼を狩る妹と再会して、妹を解放するために叔父と激闘を繰り広げて、死の縁で佐藤神拳の奥義に覚醒して叔父を殪して、こうして妹を雉として一行に加えるわけです。

そして4人で王宮を襲撃。猿が「ここはわいに任せて先に進むんや!」とか言ったり、雉が「私も一緒に!」とかフラグ立ったりしながら、馬鹿王の元へ桃姫と翼が辿り着きます。

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「おお、おお、よくぞ参られた李姫。そなたの美貌はいやましておるようで何よりじゃ」馬鹿王は鼻の下を伸ばしてそう言った。

「お前の命令を受けた鬼どものせいでずいぶん肌は荒れてしまったのだがな」

「ていうか、お前の名前って“すもも”だったんだ」翼は少し意外な事実に驚いていた。

「黙れ。その名は嫌いだ」

「李姫、先だっての『犬の餌にしてやるから覚悟しておけ』という宣戦布告、別段朕は気にしておらぬ。今からでも遅くはないから撤回して我が後宮に入り、かつてのごとく朕に奉仕してはくれぬか?」

「やれやれ、こちらは痛めつけてるつもりだったがやはり馬鹿の底は測り難い。警告が通じないのならば、実践してやるしかあるまいな。おい、翼!」

「ワン!」

「それはもういい。犬と言うのは撤回だ。お前個人としても恨み骨髄であろうが、私からも重ねて願おう。こいつを殺してくれ」

「今までの強敵には必ず一枚噛んできたくせに、そんなに嫌いか?確かにキモいが」

「触れたくもない……と言いたい所だが実際触れることすらできまい。私ではお主とヤツの間に割って入ることなどできそうもない」

「姫……」

「だからこの闘い、必ず勝て」

(中略)

「ぐああああ!死ぬ!?朕が死ぬ!?バカな!全身を改造して、機械の体となって、不死身になったのに、何故?何故?何故?」

「佐藤神拳究極奥義に破壊できぬものはない。汚い口を閉じ、おとなしく死ね」

「が……はっ……」

「やったわね」姫が駆け寄り二人で三段変形した成れの果てを見下ろす。

すると背後から馬鹿笑いが聞こえてきた。

「わはははは、よくやった!よくやったぞ継承者!」

「貴様は!?」

「王子!」

「よくこの化け物を殺してくれた!これで王位は俺のものだ!」王子は銃を構えた大勢の兵士を連れており、その銃口は二人に集中していた。

「こんなに上手くいくとは、まったく馬鹿を焚き付けた甲斐があったというものだ」

「どういうことだ!?」

「そうか!不死の超人と化した馬鹿王を殺させる為、王家の伝承にある佐藤神拳の継承者を燻り出そうと持ちかけたのか!」

「その通り!機械の体を過信した王はまんまと乗ってくれたよ!そして、今この場に残るは銃には弱い生身の人間。この千載一遇のチャンスを逃す手はない!それ、反逆者を撃ち殺せ!……ってあれ?」翼は神速で近づき、既に王子を組み伏せていた。

「お前も喋りすぎだ。さて姫、こいつは?できればもう殺しは勘弁なのだが」

「お前の国だから好きにするといい」

「……ちょっと待て、お前が女王になるという約束だったろうが」

「なるとも。お前の夫になるのだからな」

「は?」

「いやか?」

「ちょっと待て、心の整理が……」翼が返事に窮していると唐突に誰かが叫んだ。

「新王、万歳!」

「新王家、万歳!」歓呼の声は次第に広がり、翼の退路はなくなったのだった。

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馬鹿王がちょっと苦悩しているかのような描写や、王子が黒幕的な雰囲気を醸している複線をこうやって回収するってのはどうだろう?

個人的にはハッピーエンド好きなので、フラグはきちんと回収します。

死亡フラグ?なにそれ美味しいの?

だいたいこんなストーリーとかどうよ。

くだらないけどさ。

……だれてきたので終わります。