クラーク『2001年宇宙の旅』/読書感想

読み終わった。映画を見たくなった。

ほぼ全編「ツァラトゥストゥラは斯く語りき」のイントロだけが繰り返し頭の中に流れながら読みました。

傑作はやはり時を越えて面白いです。

以下、ネタバレします。

一番良かったのは、HAL9000が精神的に病んでしまって殺された後、地球に居たHAL9000の同類までもが精神的ショックを受けて不調に陥ってしまうという点です。

この作者は登場人物の精神状態についてとても細かい配慮を貫いています。

ボーマン飛行士が計画の真の目的を知った後、人類の代表としての意識を持って身嗜みに気を配るようになる点など、行き届いていると思いました。

モノリスの正体については、その結末は21世紀に生きる僕にとって使い古したファンタジーに見えました。しかし、当時のSFがたどり着く終着点としてとても妥当なものであったとも思います。

それは、科学万能主義的な意識が辿り着く究極の存在の追及…と言う事ができるのでしょうか?有機的肉体が捨て去られた後に来る無機的肉体、そしてその先は?という疑問に対しての回答をこの作品は提示したのでしょう。

しかし、21世紀に移る前後から、SFはこの有機的肉体を捨てない理由を探しているような気がします。または、我々が宇宙に飛び出し、他の星に進出できない理由を探している…そんな気がします。

この40年間のギャップに、科学の万能性は否定されて人類の限界を科学が救うことがそんなに簡単でないことがわかった。

それが結末へ僕が抱いた違和感の正体ではないかと推測しています。

HAL9000が作られた方式で人工知能を作ることにも成功していないですしね。

多分、僕らが思っているよりもはるかにコンピュータは完全ではないからだと思いますが。

エラーは人間が修正しなければならないから。

でも、多分人工知能の成立にはエラーを発見する二つ目の意識、自己批判性が必要なのだと思いますけど。その意味で、やはり対話式育成は人工知能に不可欠と思いますし、倫理性を与えるためにも必要と思います。

考えたことはそれくらい…というか、本を読んで得られたものは大抵アイディアの萌芽であって、熟成されたものではありえない。だから今はこれくらいしか書けないし、もし将来なにかこれに触発された結果として書かれた記事は、あまりこの本と関わりの無い形で書かれるかもしれないです。

読書感想を直後に書くというのは、そういう欠点があるのかもしれません。