破滅志向的夢でした/夢日記
■071215.sat-1
窓から遠くを眺める。
見渡す限りの海と空、白い雲が流れていく。
空気は澄み渡っていて、とてもおいしい。
ああ、この空気が吸えるのもあと数時間か。
食堂は少しずつにぎやかになっている。
みんな不思議なほど普段どおりだ。
席に着き、談笑し、最後の食事を楽しんでいる。
地上の人間はたったこれだけになってしまった。
そして、それも終わる。
□ □ □
最後の瞬間は酒を呑んでいたいな…
でも、破滅の瞬間が予想より遅いとべろんべろんになるか…
■071215.sat-2
騒がしい。まったく、俺の高校生時代はこんなに落ちつきがなかっただろうか?
いや、比べるべくも無い事かもしれない。時代も、学校も違う。
山道のカーブで揺れるバスの中、俺は安定をなんとか保ちながら声を張り上げた。
「いーか!おい!静かにしろ!今から薬を配る!これが胃薬で、こっちが肉を…」
肉を…?俺は何の薬を配っているんだ?
「せんせー、あの建物がそう?」
生徒が窓の外を指して俺に声をかける。そうだ。あれが今日の見学の目的地。
「とても音声合成ソフトを造っているとは思えないね」
「そーよね、もっと都会にあるもんじゃないの?」
そうだ。なんでこんな山奥に来ているのだ?
バスが停車し、生徒たちが降りる。
巨大なコンクリートの門の前で、和服の女性がにこやかに内部に案内する。
おかしい。おかしいぞ。俺は少しめまいがした。中から声が聞こえる。
「後ろを見たな」
「いや…ちょっとくらいは…う…うわぁぁぁぁ!」
悲鳴!?俺は慌てて中に入った。
「ようこそ、先生で最後ですよ」
俺の後ろで扉が閉まった。
中は和風だ。部屋は僅かに下り、畳一枚ごとに小段が作られている。
柱に柱に書付が貼られている。
『七つ下れ』
「さ、先生もどうぞお進み下さい。でないと…」
俺は下り始めた。一歩一歩、畳をわたる。
七段降りるとまた柱に書付が貼られている。
『十つ下れ、下を向いて』
下を見て歩く。他所を見るなと言われると見たくなるが…見ない。努力して見ない。
下りきるとそこは土間だった。
「さ、先生、お頼みしたい事がございます」
「何を?」
「麻生を倒していただきたいのです」
「倒す?どういう意味だ?」
「できないのなら働いていただきます」
「ここで?」
「はい」
奥に連れて行かれた。
水の入った甕を運ぶ。重い。
曲がり角の先から声が聞こえてきた。
「助けて!助けて!目が!豆に!」
「あら、残念。さようなら」
「苦しい。くるし…」
「助けたい?」
いつのまにか後ろに女が立っていた。
「働いたら助けてあげるわ。きっとよ。ええ、きっと」
そして俺は一生懸命働いた。けれどもいつまでたっても俺も誰も開放されなかった。
だから…
「ぎゃあああああ!」
「ひぃいいいいい!」
良く斬れる。この肉切り包丁は本当に斬れる。
それもそうだ。この俺が念入りに研いだのだから。
こいつらのために研いだのだから。
何人斬ったか。それでも刃毀れしない。不思議な包丁だ。
奴等の使うものは何でも不思議だった。それを利して俺が奴等を殺している。
もう、居ないのか?いや、あの女がいる。
この屋敷のお姫様。黒地に朱で蝶を染め抜いた着物を着た女。
「あなた…何をしているの!?」
何?
「私を殺したら出られなくなるわ!」
そうかもしれない。でも、そんなのはもうどうでもいいんだ。
「待って!あなたを出したくなかっただけなの!」
だからどうした!
「私は…!」
俺は刃を振るった。
□ □ □
よく昔話などで囚われて僕になる話があるけど、
あんまりやりすぎると狂っちゃうだろうね、
というお話。
殺っちゃったZE☆