大型補強依存症/Hawks

野球に限らないことかもしれないが、大型補強を立て続けに行った金満球団は数年内にかなりの苦境を味わうケースが多い。

それは、大型補強を行う前提として、補強ポイント以外のポジションは概ね25歳以上の、実績ある選手が埋めている状況があり、そこに、かなりの実績を残している30歳前後の選手を加えることが大型補強の意味するところである以上、レギュラーの大半が30歳±3程度の年齢層に収まることで、数年後に複数のポジションで同時に年齢的衰えによる故障欠場や成績低下が発生するという形であることがしばしばである。

これを避けるには年齢層が集中しないように毎年若手をどこかのポジションで育てていかなければならないが、大型補強はそういう穴を埋めることを意味するためにそういう育成ポジションがなくなり、年齢層の固定化は避けられないのである。

また、大型補強によって若手の起用が減ると、若手の育成力そのものが減退する恐れもある。なぜなら、2軍で育成手法をいくら試行錯誤しても1軍でその成果を試す機会が無いのだから、どの育成手法が正しいのかがチーム内に蓄積されづらくなってしまうからだ。1軍と2軍の配球には違いがあると言われるが、実際その違いを体験できるのは1軍に上がって出場した選手だけであり、彼らの経験したことがそのまま2軍コーチの経験値となる以上、1軍で若手の出場機会を奪うことは彼ら2軍コーチの育成力の向上を阻害することを意味するのではないだろうか?また、1軍コーチもベテランへのアドバイスばかりに慣れてしまい、若手へのケアの仕方を忘れてしまう恐れがないだろうか?ベテランはそれなりに経験を積んでいるからアドバイスが楽だ。しかし、若手は経験が無いから噛み砕いた説明をしてあげないといけない。そのノウハウが廃れたりはしないのか?

また、数年にわたって育成が“うまくいかない”状況が続くと、2軍の活気もなくなってしまうのではなかろうか?

今年の北海道日本ハムファイターズ千葉ロッテマリーンズを見ていて分かるように、点を取るには大砲ばかりが必要なのではない。

ただ漫然とバントをやって得点圏にランナーを送ることばかりが必要なのではない。

局面ごとに的確な戦術を選択し、その戦術にしっかりと応えることができる選手を揃えることこそが必要なのである。

場合によっては本塁打よりも四球が投手により大きなダメージを与えるし、凡打でも右方向と左方向で全く意味が異なることもある。

今のホークスに必要なのは、そういう局面ごとに的確な打撃をできる選手であって、長打を打てる選手はもう十分すぎるくらいであると思う。

今オフも長距離砲の獲得に動くと言うが、本塁打ならば日ハムとロッテよりも多く打っている。その補強方針は見当違いではなかろうか?あるいは、松中のプライドを刺激しないだろうか?

それよりも問題にすべきはむしろ、得点圏での心構えであろう。それはよく取りざたされる打率や本塁打や打点には現れにくいものだ。

なんだか、見当違いな補強が成されそうでとても嫌な予感がするのだ……