歌う世界/daily
足音が刻むリズム。
不思議に右の足音のほうが左の足音よりも高く聞こえる。
まるで、リズムの裏を取っているかのようにとったっ、とったっ、トッタッ、トッタッ。
足音に合わせて腰から下げた鍵束が甲高い音を響かせる。
かちり、ちりり、かちゃり、ちゃらり。
車道からも音が生まれる。
ごう~っという低くうなるようなタイヤと路面の摩擦音に、ぶろろ…とエンジンに起因する間隔は短いが規則正しい重低音が混じる。
列車の接近を知らせる遮断機の警報音はカンカンとけたたましいが、けたたましいがゆえの残響とあいまってそれほど激しく心に迫ることはない。
そのうち列車が近づいてきて、ガタンコトンと通り過ぎていく。
機械的な音の嵐が過ぎた後は、決まって生き物の音がよく聞こえる。
鳥がピチチと空高く鳴き、ひょうっと風が通り抜けた。
意識から遠ざかっていた足音がまた耳に届き始める。