鍵束/myself
ズボンのベルト通すトコに、三つの鍵を付けたキーホルダーを提げている。
一つの鍵は、自宅の鍵。
一つの鍵は、研究室の鍵。
一つの鍵は、バイト先の鍵。
つまりはそれらは僕の今の所属先を示していて、なんだか象徴的ではある。
右の腰の辺りに提げられたそれらは、歩くたびにぶつかりあってちゃらちゃらと軽快な金属音をたてる。
その音に、僕は監守を想起する。
暗くじめじめした光の届かぬ奥底の牢獄に、閉じ込められているのは誰?
一つの鍵を取り出してドアを開ける時、その時現れ出でるのは誰?
その鍵に対応した、虜囚は誰?
監守は鍵束を持っていて、それを戯れに揺すって音をたてる。
鍵こそが牢獄の中での権能の象徴。
だから僕は、殊更に鍵の音を立てる。
ちゃらちゃら、ちゃらちゃらと、高らかに。