夢日記060320
■Mar.20.mon■
雑多な街ーここは上海。
何もかもが灰色の裏街を通り抜け、辿り着いたのは巨大な朱色の門だった。
高さは20mをゆうに超え、幅も片側三車線の国道並み。その門の扉は固く閉じられている。
建造年はいつだろう?非常に古い建物だ。朱色に暗緑色が混じっており、その門に降った時の重みを示している。
僕らが門の前に立ち尽くしていると、脇にあるくぐり戸がわずかに軋みながら開いた。
戸をくぐって現れたのは白い道服を着た男だった。
ゆっくりと顔が上がり、目が合った。その男、にこりと笑う。
それは友好の証ではない。愛想笑いでもない。そこにあったのは、愉悦。これからお愉しみだ、とでも言いたげな―。
辺りの空気が急激に冷たく、張り詰めた気がした。それを感じたのは僕だけではなかったらしい。皆一様に警戒心を示している。
僕ら全員の視線が集まったのを確認してから、男は静かにかつ丁寧に会釈をした。その動きはゆったりとしながら、それでいて淀みが無い。完璧にして冷徹な挙措だった。
冷たい笑みが再び元の位置に帰る。ふっ、とわずかな間を置いて釣り上がった口角が緩み、言葉を発した。
「お話は伺っております。では、中へ」そう言って半身を開いてくぐり戸を指し示した。
指し示したのは解ったが、誰も進み出る者はいない。中に入る事を連絡したのは確かだが、こんな危険な気配を放つ人物が案内役として出てくるとは思わなかったので誰もが怯んでいる。
空気を察したのか、道服の男が先に立ってくぐり戸を通っていった。付いて来いと言うことか…。
僕をしんがりに全員がくぐり戸を通った。
通った順に感歎の声を上げる。門をくぐった先はこれまでと全く別世界だった。
灰色の街を抜け、朱色の門をくぐって出た先は、木々の緑と流れる水の青が眼に鮮やかな庭園だ。
あまり高い木は無い。せいぜい低木から中高木といったところか。目に付くのは梅や桃の木。それから、庭の奥から続く煉瓦造りの水路の脇に、柳が植えてあるのが見える。
水路を流れる水は清く澄んでいる。この大陸でこれだけの清浄な水をこれだけ大量に引いてくる事が、一体どれだけの力を示すのか見当も付かない。
門からは石畳の通路を歩くようだ。通路の幅は1mをわずかに切るだろう。それ以外の部分は芝生ではないが、草ですっかり覆われている。この草の繁茂もあの水路のお蔭だろうか?
ふと、尿意を催したので、僕は通路の分かれ道でそっと列を離れた。
他意は無い。これだけの屋敷の主に会うという事を意識して、緊張したのだろう。
人気の無い方へと向かう。木が多いので10mも歩けば、元来た道は見えない。逆に水路が見えてきた。
階段を三段登り、煉瓦造りの水路の上に立つ。本当に水が綺麗だ。掬い取ってそのまま飲めそうなほどに澄みきっている。
水路の幅はおよそ1m。ジャンプして渡れない事も無いが、そうする事は無い。なぜなら、少し先に橋が架けてあるのが見えているから。
さて、煉瓦造りのアーチ橋を渡ると、水路の向こう側が急落差で切り立っているのを知った。先ほど通って来たような灰色の街を見下ろす。すぐ下を狭い道が通っているが、水路から地面までたっぷり5mはある。つまり、平屋の多いこの辺り一体では、遠くの山まで視線を遮るものは何も無い。
今は寺院だというが、かつては貴族の邸宅であったのかもしれない。ここにこうして立って見下ろしているだけで、この見えている全てが自分のものだと思えるような眺望だ。
…と、いい気分になっている場合ではなかったな。
しばらく水路沿いに進む。ほどなく、水の迸る音が聞こえ始めた。水路の一角が切られて水が下方へと瀑布となって落ちている。その盛大な様子にまた、胸が透くような気分がした。
邪心というか、稚気というか、ある考えが頭に浮かんだ。この清浄な流れに立ち小便しよう、と。ズボンのチャックを下ろし、思うが侭に放つ。スミマセン。でも、この感じ、男なら解ってくれると思う。
その時、下のバックストリートを少年が通りかかった。少年は俺の姿を見て眼を輝かせた。
「お、なんかニーチャン楽しそうなことしてるなぁ。俺もしようっと」
そう言った少年は、煉瓦の壁をよじ登り始めた。同じ事をしたいのだろう。
用を足し終えた僕はズボンを整えて、よじ登る彼を見ている。彼はなかなか力強く、年経た煉瓦のわずかな隙間を捉えて着実に登ってくる。
しかし、上に行くほど煉瓦に生えたコケが多い。水路から滲み出る水を得ているからだろうか。
そして、案の定少年は手を滑らせて、落下した。下は水路だが、これだけの水量だ。流されてしまう可能性は高い。
(あ、死んだ。)とっさにそう思った。
慌てて下に降りる道を探す。流される前に掴まえないと。
しかし、その耳に甲高い声が飛び込んでくる。
「助けて!」
こちらは庭の方だ。
悪い事は続くものだ。焦るが体は二つ無い。
□ □ □
ご不浄のネタで済みません。
しゃあないやないっすか。見たんやもん。
ま、伏せてもよかったけどねぇ。ギリギリセーフかなぁと思って。
ああ、ところで。
巷では「海の夢を見ておねしょ」とか、「トイレの夢を見て…」とか、言いますよね。
僕の場合は、むしろそのものずばりなのですが、小学1年か2年かでおねしょはしっかり止まってますから全くそんなこと無いですね。
その位小さい時は、そういう水関連の夢を見たらしっかりおねしょしてましたけどね。
今は、そのものズバリでも、全くそんなこと無いっす。
ていうか、夢の中でも僕は、トイレ行って、メシ食って、学校行って、布団で寝てますから。
夢の中でも普通に(?)生活してます。