魔術師の死

少し後れ馳せながらこの記事では去る15日にお亡くなりになった仰木監督に哀悼の意を表したいと思います。

僕が知ったのは16日の朝刊でした。

信じられませんでした。

魔術師―その称号は全く適切で、仰木監督は本当に死なない、転んでもただでは起きない、どんなに打ちのめしても次は全く違う姿をとって向かってくる・・・そんなイメージがあったものですから。

僕はホークスファンだったので仰木監督は敵将だったわけですが、その選手の能力を十二分に引き出す采配には本当に実力差以上に苦しめられたように思います。やりづらい相手というか、掴み所が無いというか・・・。

しかし次の一手が楽しみな監督でした。

オリックス近鉄を率いて通算成績を勝ち越している事からもその名将振りがうかがえます。

しかし、その最大の功績はイチローを世に送り出したことでしょう。

イチロー振り子打法と登録名変更を容認(しかも『イチロー』が珍しがられないように『パンチ佐藤』も同時に誕生させて)、そして一軍レギュラーに大抜擢。その後の活躍はいわずと知れたもの。

そういえばオールスターで投手・イチローをマウンドに送り出し、ファンの見たいものを見せてくれる監督でもありました。

そして、運命に翻弄されて生まれたプロ野球の鬼子・合併球団オリ近。仰木監督以外に纏め上げる事が果たして出来たでしょうか?

仰木監督があってこそ二つの敵が一つのチームとなり、そして走り出す事が出来たのだと思います。

そんな今季は抗癌剤の投与を受けながらの、最後の力を振り絞るような指揮だったとか。

くう、パ・リーグファンとしてこんなに泣かせてくれる事はありません。まさしく命を懸けてグラウンドに立っていたのです・・・。

パ・リーグを盛り上げ続けた名将に感謝。

あっちでは飲み過ぎても体は壊れないでしょうから、好きなだけ飲んで、好きなだけ野球をやってください。

こうして魔術師は再び眠りに就きました。

しかし魔術師は死なないからこそ魔。

その魔術は形を変えて受け継がれ、必ず蘇る。

また、次なる魔術師をプロ野球ファンは待ち続ける。