今傍らに箱が在る。
ふむ。
もしかしたら猫が入っているかもしれない。
その猫は死んでいるかもしれない、生きているかもしれない。
観測するまでは不確定だ。
しかし、猫ではないかもしれない。
親友に突き落とされた美しいお嬢さんの首が入っているかもしれない。
いや、オルゴールなのかもしれない。
蓋を開けるととても綺麗な音で歌う。
はたまた、そこには空が広がっているかもしれない。
箱いっぱいの空。
どこまでも続く、その入り口が出口になっている空いっぱいの箱。
通り抜けて、なくなってしまった。
空想の箱。