幽玄・夢幻/散文

宇宙ははただ一点の無の揺らぎに始まって、

そこから爆発的に膨張して拡散して今に至る。

その宇、つまり空間は光速で拡張するも、

誕生から今に至る全ての時間において、

エネルギーの総和は一定のままだ。

つまり、空間は有限である。

しかしてその宙、つまり時間は光速で過ぎ行くも、

誕生から今に至る全ての空間において、

エネルギーは拡散し尽くし、やがて絶対零度となる。

つまり、時間も有限である。

空間が有限故に、時間も有限―。

だがしかし、この天地に対して我等人間は余りに矮小で、

その限界を知覚する事は出来ない。

我等に許された時間は僅かで、

その時間に利用できる空間も僅かだ。

故に我等にとって、

時空の果ては夢幻の積み重ねの先の、遠く遥かに存在する。

全てが有限であるのに、夢幻の如く深みがある。

まっこと宇宙とは、幽玄である。