上橋菜穂子『夢の守り人』新潮文庫/読書感想
「守り人シリーズ」の3作目にして、一区切りの作品。
バルサはカンバルからトロガイ師の隠れ家へと帰る途中、人攫いに追われる歌い手を助けます。
そのころ、タンダとトロガイ師は病でも呪いでもなく人が眠り続ける現象に頭をひねっていました。
タンダは、眠り続ける姪っ子のために体から魂を飛ばして姪の魂の行き先を探ってみようと試みるのですが――
タイトル通り夢にまつわるお話です。
相変わらず戦闘描写が良い。
下手なラノベよりも漫画的と申しますか。緊迫感があります。
一方でだんだんとバルサが丸い部分が出てくるのが楽しいところです。
解説を養老さんが書いています。
僕は養老さんの文章を読むと「触覚的だな」と思うのです。それは「てさぐり」というか、中空で土をこねるように形を描こうとするような感じがするということです。
つまり、なんだかよくわからない。けれどなんとなく伝わる。そういう感じです。
解剖とか昆虫採集とか、コミュニケーションが三次元的な視覚の方向に特化していて、だから、認識の断層を「壁」として認識されたのだと思います。
僕はどちらかというと耳の方に偏っていて視覚はやや苦手なのですが、なんとなく、この解説文、わかります。僕は、この作品の音の部分が好きですが、うまく伝えられません。
そういう視覚的聴覚的に良い作品だと思います。