森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』中公文庫/読書感想
「僕」は戦闘機のパイロットで、
飛ぶことが好きで、
飛んでいる者を尊敬していて、
空に帰りたがっている。
本作では地上にいる時間がすごく長い。
それまでは空中戦があるのが当たり前の作品だったのに。
だから最後の空中戦が際立って楽しい。
まるで僕らも自由になったみたいに。
でも、長く生きるほど、積み重ねたものが大きいほど、
重量が増し、周囲の人間との粘性が増えて飛びにくくなる。
森先生は空や風のイメージが強い。
流れはつかみにくいけれど、確かなルールの下に動いている。
高い所から俯瞰している。
この作品の解説もよい。
本当に解説の依頼先がすばらしいシリーズだと思う。