銀行強盗/夢日記
■070919.wed■
上の腐敗を告発しようとしたら見事に左遷されてしまった。
田舎の支店の支店長が今日からの仕事場である。
初日、得意先への挨拶回りから銀行に戻ると、銀行強盗が来店していた。
ナイフを女性行員に突きつけ、金を出せと脅している。
目は完全に据わっていて、まともじゃない。
しかし、僕はそれを幸いに背後から大胆に近付き、肩を叩いた。
「あ゛あ゛ん?」
酒焼けしたかのような濁った低い声を出しながらそいつは振り向き、女性行員に突きつけていたナイフをこちらへと向けようとした。
しかし、僕はすでに右肩を叩いた手を滑らかに動かしてナイフを持つ右手の肘を捕まえ、足払いを掛けてそいつを床に転がした。
そのまま裏十字に移行しようとしたが、ナイフに一瞬怯んでしまってそいつがうつ伏せから仰向けになることを許してしまった。
僕は急いでそいつのナイフを握った手首を追い、捻ってナイフを落とさせる。そして、十字固めを仕掛けるが左手でロックを引き剥がされ、逃れられてしまった。
上体を相手が起こそうとしたので、背後に回って締めを仕掛ける。
「早く警察を!」と周囲の行員に声を掛けたが誰も動こうとしない。
「どうした!?早く…」叫ぶ僕と目が合った女性行員がおずおずと口を開く。
「その…お屋敷には連絡しておりますので、すぐに迎えが…」そう説明しる女性行員に、どういう意味かと訊ね返そうとしたとき、入り口からことさらに張り上げたような、しかし、演出された優雅さは失われぬように意識して抑制された声音が上がった。
「どうもご迷惑をお掛けしました」
入り口から入ってきた女性は黒いドレスが良く似合う、傲慢さと酷薄さを嗜虐的な笑みに顕示した美女だった。
「さあ、二郎。帰るわよ」
女がそう言うと、さっきまで暴れていた男が大人しくなった。
「放してあげてくださいな、店長さん」女はそう言った。
僕はその見下ろす目線を敵意を持って受け止めたが、一息ついて男を放してやった。
男は完全に振り返りはしなかったが、少しよろめいたふりをして首を振りちらりと横目にこちらを睨んだ。
「この度はご迷惑をお掛けしてすみませんでした。どうかお許しいただけますよう……」
そう言って女は頭を下げた。
「それでは、失礼致します」
そうして、男と女は去って行った。
騒ぎの後、ほとんど時間を掛けずに行内は通常通りの空気に戻ってしまった。どうやら、こんなことは日常茶飯事であったらしい。
僕は釈然としないながら、とりあえず衣服の乱れを直すために奥へと入っていった。
そこへ、電話が掛かってきた。
「よお」
「どうだそちらは?」
「まあもうちょっと待ってくれ。あまり急がせるな」
「急がせたわけじゃない。心配しただけだ」
「へまはしないさ」
「頼むぞ。ゆっくりでもいい。慎重にな」
「ああ。…それから、彼女も動きを再開したらしい」
「本当か?」
「さあな。もともと彼女の動きは読めないからな。案外、あんたの近くにいたりしてな」
「まさか。…では、そっちは頼んだぞ」
「ああ、期待して待ってるんだな」
電話はそこで切れた。
仕事を終えて街へ出ると花屋の店員に声を掛けられた。
色黒で短い髪をウェーブさせた美人。目元の泣きぼくろが特徴的な―
「君は」
「お花、いかがです?」
「…そうだな…この花について説明してもらえるかな?」
「シンガポール経由で入ってきました。サラと言います」
「そうか。君はここには長いのか?」
「いいえ、すぐに旅に出る予定ですので。でも、またお会いできると思います」
「そうか。お元気で」
□ □ □
どういう背景なんでしょうかね?