大暮維人『天上天下』UJ/漫画感想

この度完結し、最終巻が発売されたわけですが……「迷作」と言わざるを得ないな。本当に……。

主人公とは何か、構成とは何かを深く考えさせられる。

超常の力を持つ登場人物達。彼らは何故この学園に集い、そして闘うのか。

その闘いは、近くは2年前に、より遡れば400年前の戦に、否、さらにさらに古くより、連綿と続く戦いの歴史の一部。悲劇の一部。

それをつなぐ鍵は、第一の主人公・凪の「龍拳」、第二の主人公・亜夜の「龍眼」、そして亜夜の姉・真夜が所持している式刀「零毀」(ちょくとう・れいき)……。

物語を構成する素材に申し分はない正統派の設定で、絵も巧い。

けれど何故か物語が分かりにくい。

以下、ネタバレ。

最終的に、主人公がラスボスに取り込まれてしまって、「いい人」っぽかったセンパイが主人公みたいになっちゃうんだな。みたいっていうか、主人公だ。己を救い、味方を救い、敵を救う。ものすごい強いラスボスっぽい兄がいるが、自身の能力は割と普通っぽい正統派主人公・高柳雅孝。

最後、凪から学んだケンカテクニックのようなフェイントを交え、これまで家系上使えておかしくないのにずっと使ってこなかった相伝の秘技を始めて使ってラスボスの止めにつながるというのも主人公としての働きでした。

エア・ギア』のカズもそうなんだけど、二番手キャラがものすごく伸びるんだよな、この作者の作品では。

『魔人―DEVIL』もそんな感じで、読み切りと主役交代したけど、結局なんだかグダグダに……。

あと、ボブの扱いね。返す返すも残念に思われるのは、無理やりっこ差し込んだボブの伏線消化回の未来の円との戦闘で「硬気功使えてたらやばかったかもね」というセリフ。うん、そだね。その通りだ。本編でセンパイに助けてもらった後、覚えてればもっと違った展開になったよね。異能の能力者の中で肉体とセンスでもって闘うってのはすごく魅力的なものになるはずだったんだがなぁ。もったいない。

そういえば、何だっけ学内の大会の名前、アレも空気だったなぁ。もうアレいらなかったんじゃね?

王道を避けてるつもりだったのかもしれないけれど、大会の存在意義が分からなかった。結局、異能の連中は大会とは別のところで戦ってばっかりだったし。

もっとはっきりと、大会の中で凪に喰わせて、成長させて、大会で育ったところをかっ攫われるっていう展開でよかったじゃん。

具体的に言えば、光臣は体調不良で6人目のまま

柔剣部は、先鋒から順に、凪・ボブ・雅孝・亜夜・真夜の5人、補欠なし(ということになっているが菅野もエントリーされているという伏線)。

執行部は、田上・神楽坂・相良・五十鈴・文七で、補欠に光臣。

Fも2つチームで参加して、円(年齢詐称)・颯・穹・鰐・炬。補欠に兜(やっぱり自称軍師で、「匹夫の勇」ネタをやる)。鰐が水龍のチャクラを使えばよかったのにねぇ。

もうひとつのFは、屍と猩と他数合わせのチームで、異能抜きのまま準決勝で執行部に噛ませ的に負ける。

柔剣部は、一回戦は普通の、二回戦、三回戦で異能が出てきて凪は喰うんだけど、その時点では相手の力を学習する能力とでも描いとく。先に決勝進出いて、強化したってことでボブを先鋒に入れ替えて準決勝でFと対戦。一方のFも"コピー"されないように技の円を先鋒に替えて、互いの思惑が交差する。結果……

ボブ△―△円

凪○―☓颯

凪○―☓穹

凪○―☓鰐

……ってところで凪の暴走モードから、カーチャンの介入とかもろもろで真の武の計画がバレたりして乱戦に。そこで真夜対炬になって再起不能。カーチャンも凪のアレのせいで死亡。鯨の話は結構好きなので、キレた亜夜でこの時に零毀は刺さっていいかも。センパイは乱戦で空気にしてで凹ます。

その後は、敵討ちのよーな話になって、光臣が籠に先に乗り込んだりする一方、凪が暴走モードを恐れて龍拳使えなくなったり(主人公が自分の力を恐れるチート封じ=成長のきっかけ)、円と相打ちになってたボブが硬気功覚えたりと色々しつつ、大会では空気だった雅孝がセンパイらしく活躍したりなんたりしてる内に凪とか真夜とか復活して、そんなこんなで全員で倒すとか、そういう少年誌らしい展開がどうしてできないかなー。

とか思いました。