のび/daily

目を瞑る。

春や秋や月夜や雪の日を思い出す。

僕は春秋は風の穏やかさに頼り、月夜や雪はその静けさを頼る。

心になじむものであればなんでもいい、僕はこれらが好きだ。

強すぎる光、明暗の鋭い反復は精神を昂ぶらせる。

だから目を閉じる。

穏やかでやわらかくゆらめく光をまぶたを通して感じる。

足裏から体が立ち上がっていることを骨のひとつひとつ、筋肉のひと筋ひと筋から確認する。

足指を伸ばして地面を噛ませる。足は少し開いたほうが体は安定する。

体重の反作用は足から腰へと上り、腰から先は大半は背部の背骨にかかっているが、一方では腹筋と肋骨とに支えられて前を通る。

腹と肺は呼吸に重要な部位だ。

腹を動かしてできるだけゆっくり呼吸する。

腹筋を動かすと内臓も動く、呼吸で胸郭がふくらむと肩も動く、肩が動くと背筋も動く。

体から伸びている両手をゆるゆると回転させる。

肩、ひじ、手首と、可動域は広い。振るのではなく、回すのが正しい。

口を開くためにあごを上下させると、頭の位置が不安定になって首を回して安定する場所を探そうとする。

ぼんのくぼがしっかり脊椎に乗っていることを確認する。

その接点から一番遠いのはひたいで、そこを遠ざけるように動かすと首筋が伸びる。

それから腕を上げて伸びをする。

息を吸いながら頭の後ろで手を合わせて、うずが脊椎の延長線上にくるようにしつつ全身を伸ばす。

息が止まって、一、二拍おいてから、合わせた手を伸ばしたまま前へと下ろしながら息を吐く。

そのまま背中を丸めて、背筋を伸ばす。

それから1、2回屈伸をして終わり。

というのが、僕にとっての正しいのび。