秦建日子『推理小説』(河出文庫)

ドラマ『アンフェア』の原作小説として有名だろう。著者はシナリオライターから振り出し、本書で作家デビューとのこと。

シナリオライター出の弊としてセリフは上手いが地の文がト書きに感じられるというものがある(解説で新保博久氏も触れている)。本書の場合はそれほど気にならなかった。

ト書きを脱してどこか漫画的あるいはテレビドラマ的だと思った。

主役の人物像は良い。ただ年齢設定は30前半でも良かった気ガス。てかドラマはそうでしょ…あぁ、想定読者層が30代以上ってことなのかな?

犯人の動機はマンガチックだった。

ドラマ版の犯人ネタバレを喰らっていたせいで惑わされたが、意外性は低かった。

むしろ途中で『ドグラ・マグラ』や『ウロボロス』みたいになればいいのにと思った。

芸能人や会社名の多くに実名を用い、説明を省いている部分が多い。時代を超えるには実はこういう細かい部分が差し障るケースがあると思うのだが、そこは生き馬の目を抜くテレビ業界の感覚と文学的感覚との差だろうか?

音羽と一ツ橋という出版社名や首都テレビと東京テレビがそれなりに諧謔を含んでいるのに、Y乳業・M自動車がストレートすぎて吹き出しそうになった。

あと、2ちゃんねる登場に吹いた。あんなとこに書き込んだら尻尾捕まれるぞ犯人w

それから「アニメ放送に固執するとある局を除き」というのは不必要な描写だと思った。あの局の姿勢は特別番組を極力減らすことで広告主が狙った番組を確実に提供できるようにしているという意味でスジが徹っていると思ってる。

つーか、アンフェアなだけにテレビ卑怯でドラマ化すれば……こほん。

そんくらいです。