隠れ家/夢日記

■070322.thr■

僕らは廃墟に隠れ住んでいた。

僕は12歳で弟は5歳で妹は3歳。

その廃墟は、二階建てほどの高さしかない小山にめり込むように建てられていた。元は発令所だった。

それが今や打ち捨てられて、窓は悉く割れ落ちて、扉は傾き、ある部屋などは屋根が崩れてしまってそこから土砂がなだれ込んでいた。

中はひどくじめじめしていて日中でも底冷えがした。けれど、誰も来ないここは僕らだけのものだった。だから僕らは安心してここで生きていけるはずだった。

ところが今夜、異変に襲われた。冷たい、大量の水がやってきた。

僕は廃墟の奥へと走った。水が足首にまとわりついて早く走れなかった。でも出来る限り早く走った。一番奥の部屋に弟達は居るはずだった。

廊下に作っていたバリケードを乗り越えた。子供じみたこの防衛策が、水の浸入を多少なりとも阻んでいることに満足を覚えた。そして見えた奥の部屋の前に、影が立っていた。奥の部屋の前にだけ、僕はろうそくを立てるようにしていた。暗くて、扉が見えないからだ。しかし、今日は影が立っていて扉が見えない。浅黒く焼けた肌にぼさぼさの黒髪長く、羽織ったぼろは煤けていた。真っ黒な、汚らしい男。

「お前が最後か」

影はそう言った。ゆらゆら揺らめきながら、目だけが光っていた。

僕は逃げ出した。今来た道を駆け戻った。バリケードを越えて水の中に降り立った。水は膝下まで来ていて、少し走ったところで僕は足を取られて転んだ。泥だらけになった顔を泥の付いた手でぬぐって、そしてまた走った。灰色の街まで、ずっと。

今、若草に覆われた小山の前に立っている。

この小山は住宅地を作るために潰されるそうだ。

ここは少し低くなっているのだが、それが平坦に均される。あの時のようなことにはもうならないだろう。

僕は16になって背が伸びていた。

あれだけ頼りがいがあった僕らの小山は驚くほど小さく感じられ、実際に簡単によじ登れた。

小山の上で、男の子と女の子が遊んでいた。

「…おにいちゃん、だあれ?」顔を上げた女の子が尋ねてきた。

「……良平」僕はやっと答えた。

「私はさがのはすみ」女の子は答えた。そして首を巡らして男の子を促すしぐさを見せる。

「オレ、火野しょうた」男の子は面倒くさそうに答えた。

「私たち、ここで会ってね、それで遊んでたの。おにいちゃんは?」

「俺は…」言い淀んだ。話すべきか話さぬべきか、迷っていた。

「あ、父ちゃん」男の子が急に首をすっくと立てて遠くを見た。

「ほんと、お父さん」女の子は立ち上がって走り始める。

草原の向こうに帽子を被った初老の男が二人、歩いて登ってきていた。女の子がその一方に飛びつくのを見て、僕は踵を返した。そして振り返らずに小山の逆側を降りた。途中でしりもちをついて、滑り降りるような格好で。

□ □ □ 

何となく、切ない。

…けど、いつの時代の話やねん、って感じですね。