くもり、のち、雨/凹
今日は曇っている。
路面が濡れているから、雨が降ったらしいことがわかる。
あめ、のち、曇り、か。
ふと、首を傾げたのは一時間前だったか。
右ひじから先の感覚が鈍っていた。
いつも右手側だ。
彼、というか、それ、というか、その朽ちかけて僕の右後方に横たわる肉塊の幻想と僕の右腕は、目に見えぬがゆえに断ち難いイトで繋がっている。
それは雨の日に存在が濃くなる。
湿気が腐敗を促進するのだろうか?
彼は腐敗するほど、原型を失うほど、本来の姿に近づいていく。
存在を、主張する。
今は彼の時間。
祝福の言葉を、昨日のうちに書き残しておいて良かった。
今日にはとてもあんな太陽のように放射する文章は書けない。
重たく、沈殿する。
垂れ込める雲のように。
そのうち雨が降るだろう。
くもり、のち、雨。
昨日の快晴が鮮明であるだけに、今日の曇天が苦しい。
右ひじから入り込んだ手が、心臓を握り締めている。
もう少し、あと少しで、望みどおりの雨が・・・。