やっぱりニコニコかFacebookかpixivか投げ銭の話になってしまうという(3)

「電子出版時代における漫画編集者のあるべき姿 (1/3)【山口真弘,ITmedia】」(全5回)を読んで感じたことをまとめつつ、実は漫画もアニメも小説もまとめたものとして過去2日分の日記では考えていて*1、そこをブラッシュアップしつつ、ネットワーク時代の創作について書いてみる。
制限時間は、今18:30なので、メシの時間を考慮しつつ3時間としようかな。

端的に書くと、ニコニコ動画+pixiv+Vectorとtanomi.com+印刷所with編集者のコンボ。

市場の縮小という前提

「40代、50代になると漫画を読まなくなる」みたいな話が出ていたわけですが、現行の漫画を読み始めたのは現50代('60年代)が最初の世代で、40代も似たようなものだと考えると、この世代をターゲットにした漫画はまだほとんど出てきていなくて当然で、本当に漫画が定着した時代は、力石の葬式やった'70年くらいが境目になるのではないかと思うのです。多分、対談の中で出てきた単行本がビジネスになった頃ですかね。アニメに関しても同様ですけど、最近は本当に「え?こんなものまで?」というようなものまで、アニメや漫画でのプレゼンテーションが差し込まれるようになりました。
……最近一番驚いたのは大成建設のアニメCMですね……土木業界が追い詰められているということもあるでしょうが*2、これほどのイメージ転換に上層部がGOを出したというのに驚きました。「地図に残る仕事」の説得力を投げ捨ててましたが。
だから、僕が考えていることは、これまでの漫画・アニメ市場の拡大は、漫画やアニメを受容する世代が高齢化していくことによるものだったという認識から、世代拡大によるボリュームの拡大が望めなくなった今だからこそ、若年層の市場縮小が強く意識されているということです。そしてそれが、既存読者層の意見が強く反映され、連載の長期化や次世代の感性の取り入れに間接的に消極的になってしまっている現状に繋がっているのではないかと思います*3
しかし、実際、世代ボリュームと併走しつづけるのって、需要は読みやすいですがいつか終わりが来るのはみえていますから会社として継続性はないわけです。だから、既存の会社がそこをケアしないのならば、若い世代は勝手にどうにかするんではないでしょうか?というよりも既に、赤松氏の言うような個人で色々とできる人というのが、個人制作業界を形成しつつあると思います。神主氏とか、竜騎士氏とかその先駆けかも*4
しかし、先日ボカロPVの動画制作の報酬について議論があったように、自分でセルフコントロールできる人は限られているし、そういう人でなければビジネス継続できないモデルでは市場の拡大が困難なわけで、セルフコントロールできない人を取り込む仕組みが必要だと思われます。
音楽業界がジリ貧しているうちに出版業界が同じ問題に見舞われるようになった感じですかね*5

やべ話が横道に逸れてる。

海外展開はあるのか?

日用品なら海外志向もいいですけど、漫画は特に受容されるには文化障壁が大きいのではないかと危惧します。
UNIQROが気にするのはシャツの柄と作るサイズですけど、マンガはシャツの柄とは比較にならない情報量があります。更に言えば、識字率のハードルもありますし……。
アニメは文字の比重が低いので、音楽はもっと、ハードルが低いとは思いますが。
MANGAは、縮小すると考えられる国内市場からすればブルーオーシャンに見えたのかもしれませんが、そう簡単ではないと思います。
向こうで何が人気になったとかはあまり詳しくないので、よく分かりませんが数年前から営業掛けていったのに体感的には状況はあんまり変わってないですよね。
「国際的に売りこむ」となった時に、要求される知識は多分ものすごく大きい。そんなことを考えるんだったら、売り込み先の現地人で漫画に理解がある人とコミュニケートする方がよっぽど楽です。「NARUTO」がウケたのは作者のイメージと海外のイメージが合致してたからじゃないでしょうか?
そういえば「クランチロール」というサイトは上記対談のきっかけとなったTogetter「竹熊健太郎氏が語る「電子出版の時代」と赤松健氏のJコミ」で初めて知りましたが、会員数600万人で、それも8割が「NARUTO」へのアクセスとあります。今観たら今季やっているアニメもいくつかあるんですけど、アニメとマンガについては海外で何がウケるのかは「数打ちゃ当たる」程度のランダムボーナスにしかならないんじゃないでしょうか?
そして、もしウケるものが出てきたとしても、既に意欲を持って次に面白いものを探しに来ているファンがいるのだから、その中から編集者を探す方が早い。

フリーアクセス

RIETI 田中氏「ネット上の著作権保護強化は必要か−アニメ動画配信を事例として」を流し読みしましたけど、結局目に触れるかどうかですよね。
目に触れない限り流行は生まれない。
流行を作るのはファンで、ネット時代では情報を統制して流行を作ることは困難です*6
それならば、なるべくオープンにしていった方がいい。
その意味で、Jコミの広告挟み込みはフリーペーパーのビジネス手法を取り込んだ上手い方法だと思います。しかし、僕は広告というビジネスモデルは必ずしもベストではないと感じています。必要な商品を得るためにもっと効率の良いスタイルがあると思うんです。例えば、FacebookTwitter2chで何かをしたいと書き込んだときに、誰かが教えてくれるような*7
僕は、その「的確な情報」に対価が払えないかと考えます。しかし、それって大したお金を払う気にはなりませんよね。1円だって払いたくない。なので、0.01円払えるような仕組みが欲しい。「イイね」ボタンを押したときに、0.01円相当のポイントが入れば、アドバイスを受けた人は感謝をより具体的に示すことができて満足、アドバイスした人もわずかながらしかし蓄積できる明確な指標を手に入れてその後の小さな親切へのモチベーションは上がります。
これを創作作品コンテンツに応用すると、評価ポイントをたくさん“振り込め”ば良い。これはニコニ広告からの発想です。
まあ、ノミのような小銭とも言いがたいポイントですが、それでも集まれば一つの市場を築くことはできるでしょう。
そして評価の高いものをジャンル毎にランキングする*8。評価の高い人の評価を、内部的に高くRankして評価に結びつける。これが編集者の機能の一部を担保できないかな、と思います。
これは、商品の情報だけでない、小説、書評、報道記事、マンガ、動画、モーションデータ、ゲーム(シナリオ、ワールド、システム)、ソフトウェア、音楽、なんでも適用できます。*9
ポイントの源泉については、過去記事をご覧ください。そこから二次創作、三次創作とヒモ付して一次創作へと評価を回収する仕組みがあれば、それそのものを楽しむだけでなく素材群としての利用からの回収にもなるわけです。

そういえば、過去記事で「ニコニコでもFacebookでも何でもいい」と書きましたけど、必ずしも巨大なショッピングセンターが必要というわけではありません。むしろ、ジャンル毎に分かれるべきなのかも知れない。
ジャンル違いの人がランキングを通じて親しみのないジャンルに触れた場合に、低い評価というノイズを混入する可能性が高まるからです。例えるなら、料理をしない人に包丁の評価はできないということです。
これはシステムの話なので、別に料理のコミュニティが形成されれば、その中で評価を完結させた方がより精確な評価が出る可能性が高まるし、その意味では、マンガやイラストはpixivが担い、日常をFacebookmixiが担う……という風にすればいいのかも知れません。ただ、ニコニコ動画などの動画コミュニティサイト*10はそれらを内包し得るし、素材の供給源((レシピは料理動画の素材となります))ということになりますので関係はちょっと特殊になりますが。

勿論、こういう仕組みがあるからといって、広告がなくなるわけではありません。「商品そのものを探す検索」がありえるわけなので……うーん、それは「検索結果の操作」に当たるわけか。それはダメだな。それに評価の共有が強化されることによって、評価のないものへのモチベーションが下がるわけだし……。いや、広告なくなるのかな……。ま、それは置いといて。

アイテムにする

ここまででコンテンツは、電子データであって物理的実体を持ちません。しかし、僕は物理的に何かを所有する欲が完全になくなることはなく、それはむしろ、やや高級な趣味として残るのではと考えています。
というより、現に「愛の存在証明商法」があちこちで行われていますけれども。
そういうAKB56的な曲芸じみた綱渡りみたいなことがやりたいのではなくて、tanomi.comのような感覚です。
電子データで惚れ込んだ作品を、例えば、小説や漫画ならば装丁から版組み、挿絵、紙質までこだわった作品に、音楽ならば演奏、編曲、音響、ジャケットにまでこだわった作品に、そういう形にする。ここに編集者的、プロデューサー的な役割の多くは残り得るかな、と思います。そして、そういうことをするのであれば、印刷所や音楽スタジオに所属するか、フリーになるしかないんではないかな、と。何で印刷所に所属するかというと、装丁の紙は紙屋ですがいろんな紙屋を知ってるのは印刷所だし、ま、そういう感じです。印刷所としても基本的な編集のクオリティが知られれば、選んでもらう理由になりますしね。そのポジションならどうだろうと思います*11

過去記事で書いてないこと

そういえば、今のボーカロイド関連の音楽消費は、
ニコニコ動画等でフリーで宣伝して、CDをコミケやボカマスで売り、場合によって委託する。
ニコニコ動画のアカウントを持っていないので、口コミからYoutubeで検索あるいはCDを貸し借り、あるいはダビング。レンタルしたりする*12
ということなのですけど、アカウントを取得しないとポイント分配されない仕組みで書いていたと思います。ま、別にアカウントを取得しないと観られない、聴けないという仕組みにするべきではありません。アカウントを取得しないと評価の和に入れないというだけのことです。

とはいえ。

こんな仕組みが出来上がるのはいつになるか分かんないですね。未来の話か。

段階としては、
①Ptを循環させて、Pt相応の利用者プレゼントを贈る
②プレゼント贈呈をアマゾンとかe-bayが直接行えるようにPt提携する
③育てる
④プレゼントから直接取引に移行する

感覚的に一番近いのは、ニコニ広告で既にお金が回る可能性を感じさせているニコニコ動画です。表面上はPtの取引だけの話なので、過去記事のブコメでいただいた「パチンコが」よりも問題は少ないはず。ていうか、昔集めましたよね、ポイント懸賞とか、ヤマザキ春のパンまつりとか。ま、日本でやりづらかったら海外鯖にしてしまえばいい。
Jコミが日本版電子書籍の規格なんぞ気にせずPDFを規格に選んだのが尤もなように、まず実現することが大事だし。
……こういう遠回りが今の日本の一人当りGDPがズルズル下がっててる原因ですよね。

最近、自分のこの思いつきに囚われすぎかも。

*1:ていうか、既にコモディティ的ソフトウェアも範囲に入れたつもりけど

*2:でも4大ゼネコンだからなぁ。意思決定周辺が若いのかもな

*3:少子化解決しろよ」って話ですけど

*4:肩書き?

*5:そういえば、若い間にCD買ってライブに参加した世代をターゲットにしたフェスビジネスも限界が見えてるんでしたっけ。なんで日本のライブビジネスは新曲が出ないんでしょう?新曲出して新規顧客を獲得するって話にならないのかなぁ

*6:世論を作るのは市民で、ネット時代では情報を統制して世論を誘導することは困難です。

*7:ここは「初心者でもわかる「Googleが衰退していく理由」」「それでも”検索”はなくならないし、Googleは”まだ”衰退しない」の公論の影響もあります

*8:この辺はGoogleRankのシステムがすごいんじゃないかな、と思います。僕はGoogleはGoogleRankが武器だと思うのです

*9:「Togetter - 「漫画の背景共有データベースつくろうよ!」」っていうのにも、こいつは応用可能ですよね。でも、こちらは先に投資資金が集まりそうなんで、先になるですけど

*10:Youtubeはコミュニティになれてないですよね。その辺もGoogleとして困ってます?そう考えると、Youtubeはテレビのようなインフラになろうとしているので、コンテンツホルダー的なコンテンツを集める仕組みは必要無いのかな?テレビ局と同じになってまうけど……

*11:この仕組みは読者の評価をダイレクトに作者に伝えるので、中間にインフラ業者しか居られないので

*12:「ヒッキーPが聞いたリアル中高生のボカロに関する生の声」より