地獄の空/夢日記

2011.01.10 holi-mon.

(BGM「デビルマン」)

「那戯無闘鬼の名を受けて~♪ 流舞を捨ててたたかう男~♫」

「おーい、魔王様がお呼びだぞ~」

「何?なんかあったのか?」

「魔王様、参上いたしました」

「うむ、そこに掛けよ」

「はっ、ありがとうございます」

「呼び立てた要件とは、教室のことじゃ」

「はい、いかがいたしましたか」

「うむ、日々の鍛錬によってみなの力は順調に伸びており、その勢いは天を突き破らんばかりの勢いである。だが、その前に突き破られそうなものがあるとは思わんか」

「はい、あのいまいましい地獄の蓋でございますね」

「違う。学舎の天井だ」

「はあ」

「『はあ』ではない。体が大きくなるばかりか、眷属が増加して教室の中はぎゅうぎゅう詰めじゃ!これでは日々の授業の集中力に影響する!」

「そうですね。たしかに、騒がしさの一因には体のトゲが当たったり羽根が視界を隠したりしたことによる諍いも関係しているかもしれません」

「そうだろう。そういうわけでお主に新しい学舎への引っ越しの検討を命じる!なに、場所は既に確保してある。あとはあのアホどもを怪我無く安全に移動させることなのだ。なにぶん、危険な場所を通るのでな」

「は?」

悪魔と言っても、多くは獣みたいなものだ。

サイズが大きく、いろいろと殺傷目的の鋭利なモノが生来身に付いている。そんなのが40体も教室に詰め込まれているのだ。トラブルが起きないはずがない。前の方の席に座っているのであまり気にしていなかったが、確かに後の方ほど巨大な悪魔が座り込んでおり、後の黒板は見えない。っていうか、巨大すぎて、蛍光灯が邪魔になって最後尾の悪魔の頭すら見えない。

「確かに、引っ越しが必要だ。これは」僕はつぶやいて、息を吸い込んだ。

「あー、みんな聴いてくれ。この教室から引っ越すことになったんで、まずは廊下に並んでくれ。その後、新しい教室へとみんなを案内する。小悪魔から順番に、外に出て列を作るように」僕は吸い込んだ息を吐き出して大音声を放った。さすが悪魔の肺。こんな飛行機もびっくりの大騒動でもよく声が通る。

「おー」「あー」「うあああ」「があがあ」

なんのかのと言いながら素直に従う。ただの荒くれ者たちだからな。

外は暗闇に包まれている。地獄に昼も夜もあったものではないが、明るい時と暗い時くらいはある。今は暗い時だ。校舎の裏手、校舎と石垣の間に並ばせる。石畳は少し濡れて、わずかな明かりに黒光りしている。

「並んだか?では、列を崩さない様に付いて来い」俺は手を上げて隊伍に促した。

歩く。歩く。歩く。

海に出た頃、空が明るくなってきた。太陽の明るさではなく、何か遠くの地平線のどこかで放たれた光が散乱された光なので、空は夕焼けのようにオレンジ色だ。いや、この場合は夜明けということなのだから、朝焼けと呼ぶべきか。海の色も赤い。空が橙いのもあるが、海自体も赤く、赤い泡が薄紅色の海面に網目を成している。

波が打ち寄せる岸辺は砂浜で、赤いガラスの破片のような砂が溶岩のようにオレンジ色の海水――いや、何の液体化分からない限りは「海液」と呼ぶべきか。砂浜を歩くだけでもじりじりと足裏が焼ける、熱で、化学反応の。

酸かアルカリかは確かめる余地もない。悪魔でなけば悲鳴を上げるところだが、そこはあくまで遠足気分の一隊だ。

何となく海を見た。湾は大きく右手に湾曲して、対岸に新しい教室……まあ、屋外に机と椅子が並び、黒板が設置されただけなのだが、それが見える。

「いいかー、あの対岸に見えるのが新しい教室だ!あそこに着いたら移動は終わりだー」僕は指さして示したが、そこに突風が吹いて、俺は砂塵に目を閉じた。どれだけのメンバーが指示を聴いただろう。目を開いて確認しなければと思った。

目を開くと、海へと吹っ飛ばされていた。

視界を流れる風景で速度と飛距離を実感しつつ、一拍遅れて左腹部に鈍痛が走るのを痛感した。次の瞬間には視界がぐるりと横転して海面が俺にとって垂直線を描いた。飛沫が散って、右肩から液体に包まれる感覚を覚える。右足が焼けるように痛いと気がついた時、足から着水して横転する図が思い浮かんで納得した。とにかくもがいて体を水面へ持ち上げようとする本能。顔が一瞬水面に出る。体の感覚はじたばたしているのに、水面は変わらぬ滑らかな波間で、雑多な水柱は皆無。綺麗な立泳ぎが出来ているわけではなかった。ただ、右腕が溶けきっていた。

足も手も出ず、海中に没する……というよりも、水面に吸収される体。目が焼けるのと、舌が弛緩するのが同じだった。

気がついたら濃緑色の藻屑同然のスライムとなって岸辺に打ち上げられていた。四肢はおろか片目玉を片目玉で見守る有様だ。こういう状態からでも再生できるのが悪魔の強みということでもあるが、死なないヤツの心配なんかだれもしないものだから、すっかり置いて行かれてしまっている。この調子では、俺を突き飛ばした犯人の追求すら為されていないだろう。俺はずるずると体をひきずって残りの道を急いだ。

歩けるようになったころ、俺は教室に着いた。そしてそこで信じられない光景を目にした。

「全員が……ちゃんと着席している……!」

世紀末幼稚園みたいな秩序のない有様だったのに、こんな光景が見られるだなんて!俺は猛烈に感動した!

「感動したか?」

そんな俺に後から声をかける者があった。

「魔王様!」

「こいつらだってやればできるんじゃよ」

いい笑顔だった。

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冒頭の替え歌だけ、後付。あとは、ほぼ夢通り。

魔的だね。

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