海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』宝島社文庫/読書感想

読んでからけっこう時間が開いちゃったなぁ。

正直、『ナイチンゲールの沈黙』がイマイチだったこともあって、無理矢理ミステリだったらどうしようかと思っていたところでした。(参考:『ナイチンゲールの沈黙』感想

しかし、『ジェネラル』は違いました。

「事件」は救急医療の絶対的エースの収賄を告発する文書……その告発者が誰なのか?その意図は?というところで、ミステリとしても面白く、かつ社会派小説としても医療費の問題に切り込んでいて刺激的。これこそ海堂尊!という出来。

もともと、この『ジェネラル』は『ナイチンゲール』とはひとつの作品だったそうですが……。分けることで難解さを避けられたものの、『ナイチンゲール』が寂しくなった、というのは否めないでしょうね……。

ああ、あっちもオープトマシー……なんでしたっけ?検死の件がありましたか。しかし、それって次の作品のネタっぽい空気を匂わせていましたよね……なんとも中途半端。

閑話休題

とにかく、『ジェネラル』は面白いです。

ナイチンゲール』でもいい性格をしていた速水ですが、その魅力が全面に押し出されています。その救急ドクターとしての無敵ぶりがカッコいいです。いわゆる理想像ですよね。

俺も燕雀を意に介さない、鴻のごとき鷹揚とした性格とそれを裏付ける実力が欲しいわ。

敵役のエシックス・コミッティーの面々もなかなかに個性的。特に“泥沼”沼田は「ああ、大学ってこういう人いるいる」といやーな笑いを誘ってくれます。

欲を言えば、『ジェネラル』単独で、もっと理解しやすい形だったらよかったかなぁ、と思います。僕自身が『ナイチンゲール』を先に読んだので確信して書いているわけではないのですが、なんとなく『ナイチンゲール』を前提とした描写が散見されたように思います。まあ、それは作品の成立と構成上、時系列的にも『ナイチンゲール』が先行して、終了する形になりますので、仕方ないとは思いますが、ちょっと描写が依存してるかな、と。

ま、これは難しいところですかね……。

しかし、海堂尊氏の実力はすごい。