最近の小説2つ/読書感想
『虐殺器官』と前後するけど、最近読んだ本の感想。
正直、良さがわからんかった。
イニシエーション的……通過儀礼的なもんなんだろうか?女性の。
人間社会の強圧さとの衝突から、自然派の生活を通して、ゆっくりとした自己の成長と、転校による転機。
男性への不信感、父の存在、などなど、ピースとしていろいろとちりばめられた要素は、感覚的であって自覚的ではない。その辺の自覚のなさが、創作的ではなくて散文的なんだよなぁ。
そこが物足りないのかも。
でも、その物語の散文性がこの作品の魅力なのかもしれないな。ありのままというか、自然なティーンの描写という意味で。
「良さがわからない」と評するほど悪い印象ではなくて、中学1、2年生の女子に気軽に進めてよさそうかな、という感触の曖昧さかな。
夏目漱石もかなりノープランに書き始めたもんだな、という感じ。
でも、群像として描いていく中で、フォーカスはやっぱり明治末期~大正時代的な男性、女性へと移っていくところが漱石らしい。けっこう、昭和の女性よりも大正の女性の方が活発だよなぁ。っていうか、明治・大正の文学って知的階級というか無産階級中心だからだよな。昭和になってくると、中流以下へのフォーカスが強まってくる。そういう文学的対象の時代性ってのはあるだろう。
この『彼岸過迄』にはこの後の作品のいくつかのピースが散らばっているよね。
なんというか、冒頭の冒険譚に始まる胡散臭さもはっちゃけてそっちを書いてみてもおもしろかったかもしれんのになー。ま、失敗したら名声を失うし、らしくはないけど。