古い商家/夢日記
*2010.09.07/sun*夢日記
木製の戸がしっかりと閉じられ、そのガラス窓の向こうは薄汚れたカーテンがかけられており、中身はうかがえない。
一歩、退いて見上げる。錆びたアルミパイプのフレームに残った覆い布はほとんど破れ落ちている。もはや屋号は読み取れない。
商いをーーその活動を止めて何年になるのか、古びた商店がそこにあった。
「開けて中に入ったら白骨化死体が……なんてことにはならないですよね?」僕は首だけ振り返り、斜め後方の商店街のおじさんに訊いた。
「いや、そんなことはないよ。ちゃんと葬儀だって出た」気楽な声で答えが返ってくる。どうやら持ち主との間に屈託はなさそうだ。
「ならいいんです。けっこう力技でいいんですか?」僕は先ほど渡された道具を手に最終確認を行う。
「いいよ。どーんとやってくれ」本当に気兼ねのない言い方だ。
鍵を持たないと現在の持ち主が言い、大型の大工道具を渡された時は僕も面食らった。これじゃまちづくりというよりも壊し屋、いや、なんだか押し込み強盗ではないかという気すらしてきたものだった。しかし、いざ作業に入り、思いのほか簡単に戸が壊れていくと、妙な充足感が心に満ちてきたのが事実だった。
そうやって、戸を取り除き、カーテンを取り払うと、中はダンボールや床机が積み重なっていた。
三和土から、小段があって、狭い入り口がある。そちらへと向かう。
引き戸を開くとそこは意外な程やわらかな光が奥の間から差し込んでいた。
思わぬ逆行に目が眩む。
ホコリ臭さが無い。
畳は目がはっきりしていて、艶を保っている。
取り囲むように配置された箪笥などの調度は、年を重ねた気品ある焦茶色にてかっている。
内側に庭を抱えた古き良き商家のつくりだ。明らかに最近まで掃除の手が入っている。
奥の間へ進むと、板張りの廊下に椅子が一脚配されている。大正から昭和くらいの趣味だっけか。
庭は猫の額ほどの土地、という風情だが、質素ながら常緑の木を二つの隅に、一隅に幼児くらいの石を配している。残る隅には潜り戸があった。
「あのう」
背後からおとなう声が聞こえる。僕は最前で入ったので、「声がしたな」くらいの印象しかない。それよりも表のあばら屋と眼前の光景との落差が不思議で仕方なかった。
隊の最後尾だった現・持ち主のおじさんが引き返して応対したようだ。話し声がするが内容はよく分からない。
僕はぼんやりとどこからとなく庭に現れた三毛猫を目で追いかけていた。
「こんにちは」後ろから聞こえたのはやや甲高くなった老いた女性の声だった。
着物をぴたりと着こなしたその老女は、折り目正しくその三和土からの入り口に立っていた。
「すみません。勝手に這入って掃除をしておりました。物音がするので何事かと思い……」
なんでも、以前の持ち主の女性とは親友で、その晩年に万一のために裏手の鍵を預かりそのままにしていたそうだ。
なるほど、古びてはいるが、品の良い関係も未だあったものだ。
そう思った。
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久しぶりの夢日記。
よくわかんね。どうなんだろね。評価不能。
穏やかだよ。
穏やかな時間欲しいよ。
つかれたよパトラッシュ……。
……イ㌔