アーシェラ・K・ル=グウィン『闇の左手』ハヤカワSF/読書感想

色褪せない名作だな。

すばらしい。

作中のゲセン人を「両性具有者」と表記するのには、ちょっと語弊があるように思う。

これは「雌雄同体」の類じゃなかろうか。

厳冬の世界、雌雄同体の人類、そこに降り立つたった一人の高度文明からの使節。

性別が存在しないことで、こちら側の性別を基底に構成される愛や友情が不確かなになる感覚。

超えられぬ文化の隔たり。

極限状況下での心の交流の果てに、何があるのか?

素晴らしい。

以下、ネタバレしつつ。

オールタイムベストだな。

さて、一つ気になるのは、性欲の処理かな。

薬物で制御してんのかな。ケメルに入った相手への対応が本当に禁欲的に過ぎる気がする。

まあ、作中では極限状況が多いのですけど、それ以外の場面でそういうことがなかったのか、と。

ちょっとそこが気になる。

全体的な穏やかさ、というのは惑星をおおよそ氷点下の世界に置いたことの逆なのなのだけれど、それも含めて実は女性的なのだと思う。

つまり、「世界の冷たさ」という見方。

世界の厳しさに対して穏やかな女性的な精神構造、っていう感覚。

というか、僕にはゲンリー・アイの性別が途中まで確証が持てなくて困った。

それくらいゲンリー・アイも中性的な描写だったということ。

男性っぽさがつよければこんな星の使節には選ばれないだろうけれど。

それにしても良い思考実験ではある。

しかし、氷点下は辛くないのだろうか?ああ、不凍液だな。

本当に面白い。