夏目漱石『門』/読書感想

これはなんというか、一種の悲劇でありうるよな。

とにかく、門の外に、のくだりの絶望的なやるせなさがすごい。苦しむべくして苦しむ人間たる自己を発見した瞬間の愕然。

しかし、その絶望を緩慢な日々にまた忘れゆくことを示唆する終章。

凡夫の矮小を描いている。

これは、かなり漱石自身の匂いが強い。

普通の物語ならば安井との対決を経て新たな関係図が描かれそうなものが、ない。

この門から先がどうなっているのか、漱石自身がそれを実地に知らなかったからこそ先がないのではないかと思う。

この先の円満な解決はフィクション性が強すぎる。しかし、古典のようなカタストロフは近代日本らしからぬ。

その微妙さ故の緩慢な結末と読みました。