塩野七生『ローマ人の物語35~37 最後の努力』新潮文庫

現在、35巻の半ば過ぎ、ってところですが、最後まで読んでから感想を書こうとすると前半に考えたことを忘れがちなので読みながら書く。

てわけで、35巻の半ばまで。

まずは、助詞の使い方がところどころおかしいところがある。

退潮の時代にあって勢いが低下したせいだろうか?文章全体に力を感じない。

それがまずは気になるところ。

さて、じゃあ、長くしますよ。

ディオクレティアヌスのテトラルキアは、時代の要請だろう。

馬を用いた襲撃には即断即決の対応が必要だ。そのための4人での分権といえるだろう。

しかし、なぜカエサルのような外征・占領・融和の戦略を採らなかったのだろうか?

それはきっと前線が遠すぎたからに違いない。つまり、前線から遠く平和を享受することが当たり前となった人々にとっては、遠い辺境の収奪など警察力で対応すべきと考えられたのだろう。しかし、そのためにその辺境出身者の軍部での地位が向上し、力を持ったことになるとは考えない。

リメスの内側は、ローマ市民と属州民との差が見えづらいほどに成熟し、均等になっていたから、制度上の取り扱いを実情と同じにした。

それをさらに拡張しようという意識がなぜなかったのか?

それはやはり生産地としてこれらの周辺地域が魅力が低かったからに違いない。

しかし、そのローマ人にとっては魅力の低い周辺地域でも、その原住民たちは独自の努力を行ってそれなりに生産力を増し、収奪を行うようになったのだ。ローマは技術的進歩において、外縁に対して相対的に停滞したのかもしれない。それを制度という小手先で対応しようとした姿に見える。

とりあえずここまで。読み進んだら追記する。

・税制改革

予算主義になったことで、税が中央政府の管轄になったことと、間接税を廃止するところとのつながりがよくわからんな。口入れ屋とか間接税がとりづらい職業形態の人口が増えたとか、そういうところだろうか?間接税逃れが横行したとか、そういうのがない限りは間接税をやめる理由にならんのでは?とも思う。また、いきなり中央政府管轄にするのも唐突過ぎるから、それに関してムニチピアとの癒着とかがあったのかもな。全部、妄想。

しかし、間接税から税制が地租税と人頭税の二つになったために、農村の暮らしは確実にさらに苦しくなったろう。農村からの人口流出が加速した点ってのは、外敵の侵入もあるだろうが、農業が相対的にもうからなくなったというのが大きいと思う。

この農業や工業からの中間搾取のために、一次産業からの離職率が高まり、生産力が低下したのだろう。これに対応するために職業世襲制を強いたのだろうけれど、それはやはり悪法以外の何者でもない。

・通貨改革

悪貨の定義の説明が微妙。「額面価値と素材価値が一致していない通貨を言う」これだけでは不足だろう。現行のあらゆる紙幣に対するフォローが緩いのもあるけれど、悪貨が何故悪貨とされるか、というところまで踏み込んで説明しなければならないだろう。

「通用する額面価値に対して素材価値が低いために、国の財政のために大量発行されうる通貨を言う」つまり、通貨を発行することで国が利益を得ることができるために、国庫を潤すために通貨を発行しすぎてインフレを起こし、市場を不安定化させる要因になるのが悪貨、ってくらいは、言った方がいいんではなかろうか。

ここでディオクレティアヌスは素材価値を高めて額面価値と一致させようとしている。これは現代ならばデノミってことになるだろう。だが、それまでの1デナリウスに対して10デナリウスの価値があるものが額面1デナリウスとして登場したことになると、紙幣ではないために通貨を素材に還元した価値として取り扱うこともできることから、額面通りの通過ではなく素材として取り扱う方が価値が高いという形になり、小さな銀塊として扱われることとなってしまう。デノミは額面の書き換えで行われる、つまり、既存の通貨が回収されなければ意味がないのだ、多分。

この時期、デナリウス銀貨は実質的に兌換紙幣みたいな位置づけになっていたんではないかなぁ。

全体的にディオクレティアヌスは官僚的志向が強いように感じられる。

制度とその機能を信頼している、という感じ。

良すぎる引き際もシステムへの信奉を示していると思う。

(……考えすぎてシルバーウィークを無駄遣いしてしまった……)

ディオクレティアヌスキリスト教への強硬さはこれまでと同じ路線だと思うんだけど、それに対するコンスタンティヌスはえらい極端だよなぁ。

母親がキリスト教に帰依して、息子が皇帝になるだの何だの言われたんではなかろうか?

(……なんかいろいろ考えていたはずだけど忘れてしまった。やはり長く時間をかけるのはよくないな)

中世キリスト教世界の成立について、すごく情報が得られるな。

このキリスト教優位の世界が技術の停滞を招いたって感じがする。

(すみません。半端ですが感想終わります)