ショート・2・ショット/夢日記

偶然にも久しぶりに出会ったショートヘアの女性と懐かしい小学校の敷地を歩いていく。

夕暮れ時のプール脇は日陰になっていて薄暗く、陽光を遮られて彩度が低下した彼女は動きも喋りもどこかぎこちなく、十代の記憶に対して余りに精彩を欠いていた。

僕は空を見上げる。橙と水色とが混じった曖昧な雲が浮かんでいた。

「小学校の頃までは俺の方が小さかったなんて信じられないよな」僕は身を低くするようなことを言って彼女に話しやすいように水を向けた。

「そうだね、あの頃はこんなに小さくて可愛いかった」

「可愛いくはないだろ。ひょろかったし。いや、いまもひょろいけど」僕はそう言って笑って見せる。

プール脇を過ぎて西日が僕に差した。はっとして夕日の方に振り返るのに、彼女はワンテンポ遅れたように見えた。

夕日を見たのは一呼吸程度の時間で、事実、僕は彼女がひとつ深く息をもらしたのを聞いて向き直った。影側でくすんで見える彼女は少し俯いていて、それから照れくさそうに夕日の中に歩みを進めて頬を橙に染めた。

「今は大きくなったよね」彼女は可愛く笑った。

西日が明るいから体育館の裏手を通った。朗らかな他愛のない思い出話が続く。

話が中学校時代に差し掛かった頃に、体育館裏側終わってグラウンドの隅のバスケットボールコートに出た。ボールがひとつ転がっている。

少し小さめのバスケットボール。小学生用だろう。僕は腰を折ってそれを片手に拾う。リングを見上げるが角度はない。ドリブルを一つ入れて右へサイドステップし、角度を足してシュート。ショートしてリングの手前に当たり、バウンドしてボードに当たった。リバウンドを取りに少し近づく。今のは3ポイントくらいの距離だった。昔から、3ポイントは入らなかったが、ブランクを考えるとリングに当たっただけでもよしとするべきか。

バウンドするボールを掴もうと身構えるが、それを目の前で彼女が軽く跳んでかっさらう。

過ぎ去る時に横目でちらりとこちらを見た翳った顔の中で、瞳と白い歯がいたずらっぽく光った。

着地した彼女はそのまま2ポイントシュートを撃つ。目の前でショートヘアが柔らかに広がった。

だが、これもリングに嫌われた。それを見た僕は駆け出し、ボールの落下に合わせて跳んだ。空中でボールをキャッチし、空中で一瞬タメを作ってレイアップを放った。ボールはリングに吸い込まれて落ちる。

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誰にも似ていない知人でした。

可愛いならなんでもいいんですよきっと。