本多孝好『MOMENT』集英社文庫/読書感想

うーむ。

面白かった、割と。

敢えて言えば、もうちょっとひねりが欲しかったかな。シンプルなのも良いけど、シンプルすぎるのも退屈だ。

主人公は病院で清掃夫のアルバイトをしているが、そのついでに患者から御用聞きをやっている。

そんな話。

なんとなく、俺は『ブギー・ポップ』を思い出した。噂と死と仕事人、共通するキーワードがあるけれど、それ以外のスタンス―会話でちょっと意表を衝こうとするあたりとかが似ていると思った。ベクトルは違って現実味が色濃いが、これも感覚的にはライトノベルに近い。結局、エンターテイメント小説というのはファンタジーの配合率の違いでライトノベルと分かれているに過ぎないような気がした。それは、舞台をどこに選ぶかの違いでしかない。

あとは舞台をどれだけ細やかに構築するか。

しかし、会話に変化球を交えようという意図はわかるんだけど、もうちょっと意外性が足りないんだよな。

「唐変木？朴念仁の間違いじゃないですか？」

くらいは言ってもいいと思うな。ひどい台詞だけど、そうすると、ちょっとラストに伏線になるんじゃないかな。

終わりがさらりとしているのがなぁ。驚きがなかった。

主人公が森野にもっと違う話をしたら面白かったかもなぁ。

もっと驚かせてほしいかなー。