森博嗣『τになるまで待って』講談社文庫/読書感想

なんか、Gシリーズの森先生はすごいずるいな。

動機も犯人も、まだ、提示されないなんて、ずるい。

とか思ってたら…おばさま…何を言ってらっしゃるんですか?

うすうす思ってたけど、このGシリーズってこれまで以上に後ろで動いている流れがすごい重要だよね。

可能性はいろいろと考えられる……。

可能性といえば。

森ミステリは、いろいろなトリックを取り扱ってきたから、「この作家ならこのトリック」っていう先入観が利きにくい。それが良い点でもあるし、読者としてはつらいところでもある。

そう考えると、ミステリの自由度は、「この作家は叙述はやらない」とか「この作家はこれが得意」とか、実はその作家性に縛られている面もあるんだな。その作家性に頼って読者の側が推理の可能性を狭めるのは、読者側の器の小ささって感じがする。

ところで、朝のコーヒーをいっしょに、のシーンも「慣れないトーストとコーヒーとかぁあ///」って感じで良かったけど、

「びっくりしました」西之園が目を丸くする。「そういうことをおっしゃるのって、先生、久しぶりですね。学生向けですか?」

という場面の安定感……ごちそうさまです。