服部英雄『地名の歴史学』角川叢書/読書感想

九大の先生の書ですね。

うーん…この先生は教養課程の『歴史と認識』の講義を担当しておられるそうですが……僕が受講したそれの内容は「東アジア史」のみだったので違う先生だったのだと思う。(←名前覚えてない。追記:調べた。俺のクラスは宮本氏だったのだ。)

あれは歴史の認識の仕方について学ぶ講義だったのに、ぜんぜんそんなことはなく時間内に中華を中心とする東アジア史を進めるだけ進むという残念な講義だった。

服部先生の講義を受けたかったです。

そういう感想を持つくらい面白かった。

地名の由来を、転訛や短縮を考慮に入れつつ、複数地域の類似地名の比較対象によって探っていく。

古地図を見るにも、資料批判―テキストクリティークを怠らず、いつ、何の目的で、誰が作成したのかを念頭に、そこに含まれる無意識・故意の誤りを排除して行く。

そういう地名学の学問過程が佐賀などの実例とともに紹介されています。

言語学関連の書物で短縮や転訛について知っていたけど、実例として学問上に取り回しているのを見るのは面白かった。

地名に現れている生活観もよかったです。

が、この本はそれ自体が網羅的ではないので、地名学的見方を類例で示した書が読みたくなりました。

これは良い入門書だったと思います。

ところで、この本で海中の尾根線を「根」と呼んだという記述を見て、「天沼矛」のことを思い出した。

古事記を読んでいる時に、最初「沼」を「泥」と空目して「『ね』?あ、『ぬ』か。『ぬ』?なんで『ぬ』?」と思ったんですよね。「ぬ」だとその「ぬ」の意味が分かんなくて。「ね」なら「根っこ」という意味でなんか天から根を下ろしたイメージかと思って。『天泥矛』の誤写とかありうるんじゃないかと。

でもこの海の「根」でこの「ね」もあるかなーって。なんつーか、海があって、棹突くイメージというか。

書紀では「天之瓊矛」と書くそうだけど、これは見た目からの名で読みを表してはいないしね。

海を渡って、上陸して、その中で国生みしたみたいな。

いや、戯言。

きっと素人にありがちな発想だから既に検証されてると思う。