高城修三『紀年を解読する~古事記・日本書紀の真実』ミネルヴァ書房/読書感想

京大文学部卒の芥川賞作家による著なので、門外漢からの意見ということになるのかな?

古事記日本書紀との間に現れている在位年数の食い違いに対して合理的な説明を行おうと試みています。

ちょうど古事記を読み終えそうだったのでよいタイミングで読めたのは僥倖か。

基本的には、①一年の途中で交代が行われた場合にその年を切り上げるか切り下げるかの数え方の違い、②干支の一巡によって革命の相を合わせるための虚構年の挿入、③書紀が書かれた頃よりもさらに古代には春秋をそれぞれ一年とする数え方により、古い世代の年が倍増している、これら三つによって説明できるとしている。

僕は別文献で中国古代・殷代以前に春秋をそれぞれ一年とする考えがあったという情報に触れていたので、古事記を読みながら仁徳天皇の100歳越えを目にして春秋2年で数えた年ではないかと思っていたから、この説には深く頷けた。

古代人の気持ちになって考えると、太陽が真東から上がって真西に沈む日の間隔がおよそ6ヶ月であることと、季節が一巡するのが12ヶ月であることを比較すると、指で数えて足る6ヶ月を基準として年を数えるのは、アリだよなぁ。夏と冬では過ごし方がまったく違うし、収穫時期を境に生活リズムを変える区切りを年の境と見るのは当然と思う。

著者は門外漢だけに、江戸期以来の記紀に関する議論を丹念に追いかけ、対立する理論を比較検討して自論へと近づいていく慎重さを見せている。

このあたりの追い方の丹念さによって、説得力を増しているところがすばらしい。